読書

『原発敗戦』で知るメルトダウンの真相

作家・半藤一利氏との特別対談収録という帯に惹かれて、船橋洋一著『原発敗戦』を手にとってて以来、原発関連の書籍を読み漁っています。ひんやりとした空気が支配する10月を迎え、読書の秋も本番、この機に4年半を経過した福島原発の負の連鎖の真相をブログ…

最終日の追悼山崎豊子展

今日10月5日が山崎豊子展の最終日。正午に丸の内ホテルで不動産業者と打ち合わせがあったので、その直前に会場の日本橋高島屋に立ち寄ることにしました。展示内容が地味な文学展の最終日なので空いているかと思いきや、会場は中高年の女性で大賑わいでした。…

ビブリオバトル観戦記@武蔵野プレイス

昨日は、ひょんなことから近所のお気に入り図書館でビブリオバトルが開催されることを知って、15時から観戦目的で武蔵野プレイスを訪れました。巷で話題になっているのは承知していましたが、実際に観戦するのは初めてでした。ビブリオバトルは「知的書評合…

『「昭和天皇実録」の謎を解く』を読む

昨年11月、東京書籍が入札(⒕業者が応札したそうです)で『昭和天皇実録』の出版業者に選定され、先月から発売が開始されました。全19巻で、皮切りに1901年から1920年までの出来事が記述された2巻が発売されました。これから順次刊行され、全巻の出版が完結…

文春新書『朝日新聞』に見るマスメディアの凋落

「慰安婦」問題や「吉田調書」に係る相次ぐ誤報で、昨年、紙面でドタバタ劇を繰り広げた朝日新聞の記者有志がその内幕を暴露したのが本書です。副題には<日本型組織の崩壊>とあります。週刊誌を蔑んで憚らない記者連中が、匿名でしかも文藝春秋社から内部…

2014年マイ・ベスト・ブックは『21世紀の資本』(トマ・ピケティ)で決まり

2014年もあと数時間になりました。ソチ五輪で男子フィギュア初の金メダルを獲得した羽生結弦、全米テニス準優勝の錦織圭(WOWOW契約しちゃいました)、青色発光ダイオードの開発でノーベル物理学賞を受賞した赤崎・天野・中村の三氏、彼らの偉業は日本人の強…

漱石『心』刊行100年〜講演会・漱石『こころ』100年と現代〜

朝日新聞紙上で『こころ』の連載が始まったのは1914(大正3)年4月。今年が連載百周年の節目にあたることから、朝日新聞は4月から100年ぶりに紙面で『こころ』の連載を開始し、今週で全110回の連載が完結します。10月からは『三四郎』の連載が始まるそうです…

池井戸潤最新作『銀翼のイカロス』の辛口書評

相次いで原作がTVドラマ化されて池井戸潤さんの小説は昨年大ブレイク。オレバブシリーズと呼ばれていた時期にブログで取り上げたりしてブレイク前から注目していた作家でしたが、これほど売れるとは想像だにしませんでした。今や、半沢直樹シリーズと云い換…

NHKラジオ第2「英語で読む村上春樹」が面白い

英訳された村上春樹作品をラジオの朗読で楽しもうという企画が昨年スタートし、2014年度前半は『踊る小人』が進行中で、後半には『ト二―滝谷』が取り上げられるそうです。ラジオ番組をインターネットで聞けることを皆さんご存じでしょうか。2011年に民放ラジ…

絶版『英国アンティークシルバーキャディスプーン百選』をヤフオクで落札

GW後半、天気がぐずついて出鼻をくじかれ、昨日は自宅で静養することに。録りためたTV番組の一部(映画や日曜美術館)を見たり、読書したりしているうちにあっという間に1日が終わってしまいました。ブログの更新もままならず今日を迎えてしまいました・…

大西巨人さんの死去を悼んで

大西巨人さんのライフワーク『神聖喜劇』を知ったのは、大学教養部の哲学の授業のときでした。たまたま最前列で聴講していたら、担当教官の水野一教授がなんの拍子からか「授業を最前列で聞くなんて愚の骨頂だよ」と宣い、大西巨人の『神聖喜劇』の話を始め…

国家権力としての司法〜『法服の王国』の教訓〜

黒木亮の最新刊『法服の王国』上下巻を一気呵成に読んで、三権分立とは所詮絵空事との思いを強くしました。本書は、司法修習同期の主人公村木健吾と後年最高裁判所長官まで上り詰める津崎守の生きざまを描いて、裁判所という国家権力の実相に迫ります。主要…

『等伯』VS狩野派

昨年は原田マハさんの『楽園のカンヴァス』が直木賞候補となり、今年は安部龍太郎氏の労作『等伯』(上下巻)が直木賞を射止めました。19年ぶり二度目となる候補作が見事直木賞を受賞され、作者の安部氏は等伯の苦難を自らの人生に重ね合わせたといいます。…

『母の遺産』を読んで

1年あまりツンドク状態だった水村美苗さんの小説『母の遺産』をようやく読み終えました(やれやれ!)。読売新聞に連載されていたので副題に新聞小説とあります。作者自身の介護体験を基に書かれただけあって、本書を読むと、核家族世代にとって老親の終末を…

浜田宏一氏の日銀批判

昨年12月、半ば敵失で自民党が政権を奪還して以来、金融緩和への期待が膨らみ円安が急速に進行しています。安部新政権発足後初の日銀金融政策決定会合を受けて、今日午後にも、政府・日銀による共同声明が発表され、2%の物価上昇目標が設定されるはずです。…

『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の500日』を読んで

昨夜から繰り返し放映された民主党現職議員の苦戦を伝えるTV映像のなかで、とりわけ元首相菅直人のどぶ板選挙のあり様は悲惨を通り越して哀れを誘うものでした。菅さんが「もっとも無責任なのは・・・」と言いかけると、聴衆からすかさず「お前だ!」と連呼…

池井戸潤の「オレバブ」シリーズが面白い

秋の夜長、ツンドク状態の新刊本の山を少しでも減らそうと読書に勤しんでいます。池井戸潤さんの「オレバブ」シリーズ第三弾『ロスジェネの逆襲』は、前作・前々作同様、テンポよく読める痛快企業小説(舞台は銀行)に仕上がっていて楽しめました。シリーズ…

『トリプルA 小説格付会社』が暴く格付会社の内情

昨年9月17日、若者を中心とする1000人余りが”Occupy Wall Street”を叫びウォール街にほど近いズコッティ公園に参集しウォール街をデモ行進してから、1年が経ちます。デモで叫ばれた"We are the 99%"というスローガンは、1%の富裕層が個人資産の35%を占める…

『舟を編む』を読んで

ブックレビューで辞書編纂にまつわるストーリーだと知って読んでみました。2012年の本屋大賞受賞作だけあって、辞書編集部というお堅い職場を舞台にしながら、ユーモア溢れる作品に仕上がっています。語り口も軽妙で辞書作りの舞台裏が次々と明かされていき…

『ピュリツァー賞 受賞写真 全記録』を読んで

ピュリツァー賞はアメリカの新聞王ジョゼフ・ピュリツァーの遺言により創設されたものです。そのピュリツァー賞の報道写真部門の受賞作すべてを収めた写真集が昨年12月に出版されました。1942年のデトロイトの労働争議を撮った写真から始まるピュリツァー賞…

庄司薫が新潮文庫の<あとがき>に登場

書店に平積みされた新刊文庫のなかに庄司薫の『ぼくの大好きな青髭』を発見、しかも収録されていたのはロングセラーの中公文庫ではなく新潮文庫。帯には庄司薫<あわや半世紀のあとがき>とあるではありませんか、失礼を承知で申し上げれば、ご健在であられ…

『3・11 複合被災』を読んで

上梓されたばかりの『3・11 複合被災』を手に取るまで、筆者の外岡秀俊さんが朝日新聞社を早期退社されたことを知りませんでした。これからは。フリーのジャーナリストとして出身地札幌を拠点に活動されるようです。高校卒業間際に氏の処女作『北帰行』を読…

「『坂の上の坂 』55歳までにやっておきたい55のこと」刊行記念講演会

先週、2003年に東京都初の民間人校長に就任し在任中の5年間にさまざまな教育改革に取り組んだ藤原和博さんの講演会を聴く機会がありました。思いの外収獲があった講演会だったので、かいつまんで内容を紹介しておきます。巷には<〜歳までにやっておくこと>…

『空白の5マイル』、残された秘境に挑んだ冒険の記録

世界最大と云われるチベット・ツアンポー峡谷に挑んだ角幡唯介さんの冒険の記録を読んで久しぶりに巻措くに能はずという感覚に囚われました、良質なノンフィクションには薄っぺらい文学作品にはない魅力と迫力があることを改めて実感します。以前、立花隆が…

将棋の世界

先月、史上稀に見る大接戦を制して森内俊之さんが4年ぶりに名人位に返り咲きました。対局相手は小学生時代からのライバル羽生善治名人、初戦から3連勝した挑戦者森内九段が圧倒的に有利と思えたのも束の間、羽生名人が攻勢に転じ勝負は最終局に縺れ込みまし…

『きことわ』の世界

活字文化の衰退が叫ばれて久しい昨今、芥川賞受賞作の読者は世の中にどれ位いるものなのでしょうか。金原ひとみと綿谷りさの両才媛が最年少受賞を果たした2004年の文藝春秋掲載号は過去最高の118万部余りを売ったと云いますから、読者を惹きつける話題性さえ…

投資銀行の鉄則は"Winner Takes All"

黒木亮さんの最新作『獅子のごとく』が米系投資銀行のパートナーまで登りつめた元邦銀マンの常軌を逸した生き様を迫真の筆致で描いています。バブル経済後、不良債権に苦しむ邦銀勢が凋落していくのとは対照的に米系投資銀行が日系の金城湯池に蚕食していく…

2011年の初読みは『神様のカルテ』

年初は何かと気忙しくブログ始めまでさぼってとうとう松の内を過ぎてしまいました。日帰り温泉にのんびり浸かり新年の計を立てようと思いながらこちらも果たせずにいます。そんな訳で少々ネタ不足気味ですが、<うりぼう日誌>本年も宜しくお願い致します。…

『坂の上の雲』の抗い難き魅力

NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』第2部(4回)の放映がこの日曜日に終わりました。最終篇となる第3部の放映は来年12月、今から待ち遠しくてなりません。数多くの司馬作品が大河ドラマ化されるなか、生前この作品に限って原作者司馬遼太郎は映像化を拒んだ…

『おじさんのかさ』の作者佐野洋子さん逝く

絵本作家の佐野洋子さんが他界されました。佐野さんの代表作と云えば77年に刊行された『100万回生きたねこ』が真っ先に頭に浮かぶわけですが、一番好きな彼女の作品を挙げよと問われれば躊躇なく『おじさんのかさ』(74年銀河社版ではさのようこ)と答えます…