美術・建築

豊洲の新名所「千客万来」開業・ウォーターフロントの景色こそ見もの

高井戸ランプから首都高4号線に入り、霞ヶ関でアウト。虎ノ門ヒルの手前から「築地虎ノ門トンネル」へ入ります。このトンネル、左右に小刻みに折れていて、運転要注意です。環状2号線をさらに東へ進み、晴海運河を跨ぐ豊洲大橋を渡った最初の交差点右手前が…

福島武山作・「鳥獣戯画杯」~赤絵細描の極み~

九谷焼が日本を代表する色絵陶磁器であることは周知の事実です。九谷焼の名工・初代須田菁華(すだせいか)は、北大路魯山人に陶芸の手ほどきをしたことで知られています。九谷焼では、吉田美統と三代目徳田八十吉のふたりが人間国宝に名を連ねています。そ…

開館したばかりの「魔法の文学館」を訪ねて

11月3日にオープンしたばかりの「魔法の文学館」(江戸川区)を訪れました。開館直後とあって、開館月の週末はすべて満席。抽選と先着順を組み合わせた分かりにくい予約方式に戸惑いながら、平日枠を何とか押さえました。最寄駅は東京メトロ東西線・葛西駅、…

見逃した「ヨシタケシンスケ展かもしれない」展のリベンジ|宇都宮美術館を訪れる(後篇)

親子連れに混じってカップルや20代30代の来館者も目立ちました。開放感たっぷりのホールで出迎えてくれたのは「あいつ」の等身大のぬいぐるみです。そこを起点にふたつの展示室を見て回ります。展示室のあちこちに置かれたお茶目なポップが目を惹きます。ポ…

見逃した「ヨシタケシンスケ展かもしれない」展のリベンジ|宇都宮美術館を訪れる(前篇)

昨年前半、世田谷文学館で開催された「ヨシタケシンスケ展かもしれない」展(22/4/9~7/3)を見逃してしまいました。ビジネスダイアリーの隅っこに展覧会や舞台のスケジュールを書き留めておくことにしているのですが、忙しさに紛れて見逃してしまうことが度…

二重螺旋構造のさざえ堂(会津若松市)を訪ねて

さざえ堂の存在を知ったきっかけは、建築家・磯崎新さんの著書『日本の建築遺産12選 語りなおし日本建築史』(新潮社とんぼの本・2011/6/25)です。本書で取り上げられた12の日本建築のなかで、さざえ堂は最も奇想天外な存在と言えるでしょう。所在地は白虎隊…

大英博物館所蔵「ゲイヤー=アンダーソンの猫」に刻まれた<スカラベ>

2023年4月29日を以て入国制限が解除され、新型コロナウイルス感染症に対する水際対策も終了しました。それから半年、都心の観光スポットはどこも海外からの観光客でごった返しています。我が身はと言うと、足掛け4年に及んだ渡航制限の影響ですっかり海外へ…

生誕120年棟方志功展@東京国立近代美術館|「世界のムナカタ」の大回顧展

待ちに待った「生誕120年棟方志功展」(2023/10/6〜12/3)が東京国立近代美術館にやって来ました。本年3月の富山県美術館を振り出しに、7月末から青森県立美術館を巡回し、フィナーレの会場が東京国立近代美術館だったのです。サブタイトルは「メイキング・オ…

年内にも「三鷹跨線人道橋」撤去へ

先頃、JR東日本八王子支社がJR三鷹駅と武蔵境駅間にある「三鷹跨線人道橋」(以下、「跨線橋」)を撤去する工事に本年12月にも着手すると発表しました。地元では「陸橋」と呼ばれることもあります。「跨線橋」が設置されたのは、三鷹駅が開業する1年前の1929…

パテックフィリップのGRAND EXHIBITION(2023)を振り返って

先月中旬、新宿住友ビル三角広場で開催されたパテックフィリップの<ウオッチアート・グランド・エキシビション東京2023>(会期:2023/6/10~6/25)に足を運びました。フライヤーのキャッチコピー「新宿・三角広場がジュネーブになる!」どおり、世紀の祭典…

『災厄の絵画史』(中野京子著)を読んで

見逃して悔やまれる展覧会のひとつが、2017年に上野の森美術館で開催された「怖い絵」展(会期:2017年10月7日~12月17日)です。先月、日経紙のコラム「こころの玉手箱」に連載された展覧会監修者・中野京子さんへのインタビューによると、来場者68万人超え…

5年ぶりの再会|東福寺の大涅槃図

5年ぶりに東福寺の大涅槃図と再会しました。初めて対面したのは2018年の涅槃会のとき。その翌年から4年の歳月をかけ約100年ぶりの令和の大修理が行われていたことを、つい最近まで知りませんでした。久しぶりに京都を訪れたタイミングで、修理完成特別公開の…

本が主役の安藤建築|「司馬遼太郎記念館」&「こども本の森中之島」

初めて対面した安藤忠雄の建築は、京都・高瀬川沿いにある商業施設「タイムズ」でした。高校生のとき、安藤建築をひと目見ようと京都を訪れた記憶があります。近代的でクールな印象を与える「コンクリートの打ち放し」が古都京都の街並みと意外に馴染んでい…

理想の花瓶|EGIZIA製フラワーベース

花を飾るとリビングやダイニングが俄然華やいで見えます。花のある暮らしには、五感を刺戟し脳を活性化させるセラピー効果もあると云われています。ですから、母の日や誕生日にかぎらず、四季折々、季節の花を活けるようにしたいものです。花のある暮らしに…

岸田劉生作《切通之写生》@東京国立近代美術館

戦争画と共に「MOMATコレクション」で見ておきたかった作品のひとつが岸田劉生作《切通之写生》(1915・重要文化財)でした。美術の教科書や画集で幾度も目にしたことのある岸田劉生の代表作《切通之写生》の実物を目にするのは今回が初めてです。第一印象は…

2022年「文化の日」の過ごし方~東京国立近代美術館から神田神保町へ~

東京に暮らすようになって四半世紀以上になります。とりわけその有難味を実感するのが秋です。「食欲の秋」や「スポーツの秋」は全国津々浦々で楽しめますが、「芸術の秋」となるとファーストクラスの美術館が集中する東京は桁違いの魅力に溢れています。独…

2023年度末の閉館が惜しまれる棟方志功記念館

2泊3日の慌ただしい青森の旅・最終日にどうしても訪れておきたかったのが棟方志功記念館です。というのは、同館が来年度末(2024年3月31日)をもって閉館することになったからです。今年7月のリリースには、新型コロナウイルス感染症の影響で長期にわたり来…

展覧会レビュー|「フィン・ユールとデンマークの椅子」展~建築家がデザインした椅子が機能的で美しい理由~

以前、NHKBSプレミアム『美の壺』で「木の椅子」を取り上げた回 (File 124) がありました。今回の「フィン・ユールとデンマークの椅子」展に数多くの貴重なコレクションを出品されている織田憲嗣さんが番組のなかで「精緻に設計された木の椅子には建築家の個…

東京海上日動ビル建て替えへ

丸の内駅舎・皇室専用貴賓出入口からまっすぐ行幸通りを西進すると右手に新丸ビル、次に現れるのが彫りの深い赤褐色タイルの格子が印象的な東京海上日動ビルディング本館(以下:東京海上ビル)です。竣工は1974年、今でこそ周辺は高層ビルばかりですが、当…

2022年8月末で見納め|チームラボボーダレス(お台場)

チームラボのアート作品を初めて目にした場所は下鴨神社でした。2018年8月のことです。古都・京都にあって世界遺産に指定される由緒ある神社で最先端のアート作品が披露されるとあって、オープニングセレモニーには京都市長や下鴨神社権宮司をはじめ豪華な来…

日本建築学会賞を受賞した「住宅遺産トラスト」とはどんな活動をする団体なのか?

キラリと光る人物を紹介する朝日新聞の連載「ひと」欄に注目しています。人物紹介と聞くと有名人を想像しがちですが、この連載の強みは知られざる有為の人物を発掘してくる点にあります。今月であれば、高知県須崎市でゆるキャラ「しんじょう君」を日本一に…

『名所江戸百景』2枚に描かれた「月の松」

先週、トーハクを訪れた帰り道、清水観音堂前(地図の赤三角の印)の「月の松」にソメイヨシノを加えた構図の写真を撮りました。博物館や美術館が密集する上野恩賜公園には数え切れないくらい足を運んできましたが、大混雑するお花見シーズンを無意識のうち…

愕然!「空也上人立像」フィギュア完売

トーハクで特別展「空也上人と六波羅蜜寺」が開催中です(会期:3/1~5/8)。京都・六波羅蜜寺所蔵の「空也上人立像」(重文)が東京にやって来るのは半世紀ぶりだそうです。作者は運慶の四男・康勝です。過去数度、六波羅蜜寺を拝観したことがありますが、…

トーハクで異色の特別展「体感!日本の伝統芸能」@表慶館

東京都の感染者数がとうとう1万人の大台を超えた1月22日(土)、久しぶりにトーハクを訪れました。ローチケで日時指定券を手配してありましたが、感染者者急増のせいでしょうか、開館直後の人出は疎らでした。普段の週末であれば、大勢の乗降客が行き来する…

並河靖之七宝記念館を訪ねて

本年12月13日から2023年春まで保存修復事業のため長期休館になると知って、京都市東山区三条通にある並河靖之七宝記念館を訪れました。秋季特別展<並河七宝を語りつぐ>の会期終了間際でした。この記念館は1896(明治29)年に竣工した七宝作家並河靖之(184…

深大寺はすっかり晩秋の装い~205年ぶりに公開された元三大師胎内仏「鬼大師」像を拝む~

毎年、初詣は地元の八幡様と調布・深大寺を訪れることにしています。初詣で授与された御祈禱札やお神札は玄関口に近いニッチェに飾っています(写真下)。今年は地元の八幡様がコロナ禍を理由に破魔矢やお札の授与を取り止めたため、お神札は映画『君の名は…

マンホール愛を覚醒するデザインマンホールの存在感~「シン・ゴジラ」のマンホールカード配布開始~

最近、近所の観光案内所でマンホールカードが無料配布されていることに気づいて、1枚ゲットしてきました。そのマンホールカードの中心には、スタジオジブリの宮崎駿さんがデザインしたキャラクター「Poki」(ポキ)が描かれています(写真下)。昨年、三鷹市…

「生誕110年香月泰男展」|神奈川県立近代美術館・葉山館(後篇)~2021年マイベスト1展覧会~

後篇では企画展「生誕110年香月泰男展」(会期:9/18~11/14)について詳しく触れたいと思います。7月に都美で見た特別展「イサム・ノグチ発見の道」も記憶に残る展覧会でしたが、葉山館の器としての魅力を加味すると、2021年マイベスト1展覧会は、香月泰男…

「生誕110年香月泰男展」|神奈川県立近代美術館・葉山館 (前篇)

9月3連休最終日、神奈川県立近代美術館・葉山館を初めて訪れました。18日に開催したばかりの企画展「生誕110年香月泰男展」を見るためです。自宅から車で第三京浜~横浜新道~横浜横須賀道路経由約1時間30分、距離にして約63km。 思っていたよりずっとアクセ…

トーハクで聖林寺「十一面観音菩薩立像(国宝)」を拝む〜不便な事前予約システムには閉口する〜

7月中旬、今年初めてのトーハク訪問。拝観前に事前予約をしたわけですが、外部システム(イープラス)依存の事前予約システムの使い勝手の悪さにはほとほと閉口させられました。都美に比べると総じてトーハクの来館者対応はお粗末です。今回の特別展の目玉は、…