金融・投資

ゆうちょ銀行超弩級POは「パンドラの箱」

2月27日にゆうちょ銀行(7182)が巨額の株式売出しを発表しました。日本郵政が売出人で、国内外で9.7億株の売出し及び最大1.1億株のオーバーアロットメントを実施します。金額にして1兆2千億円に達する途轍もない売出し規模ですから、市場の関心を一手に引き…

「ナッジ効果」あれこれ

道の駅「尾瀬かたしな」のトイレの壁に「盗まれるほど人気!?」と記したポスターを貼ったところ、トイレットペーパーの盗難が激減したという新聞記事を読んで、行動経済学の「ナッジ(nudge)効果」の一例だと思いました。行動経済学は、従来の経済学とは異…

楽天Gが個人向け社債2500億円発行へ

日本の家計金融資産構成比率(2021年)を見ると、現預金が54.7%を占めトップ、次いで保険・年金が23.4%。株式の構成比はわずか10.5%に過ぎません。株式以外の債券になると2.2%とカウントに値しない比率です。昨年12/20、日銀が実質的に金融政策を転換したため…

大波乱の2022年株式市場を振り返る~急激な世界的金利上昇に冷え込む株式市場~

12月30日の日経平均株価終値は26,094.50円、昨年末と比べると、-9.37%の下落になりました。7月8日に安倍元首相が凶弾に斃れ、異例の再登板でアベノミクスを牽引してきた黒田日銀総裁は2023/4/8に任期満了の予定です。任期満了まで大人していてくれれば、穏…

予測不能なドル円相場は1ドル=150円台に突入~家計の金融資産構成の見直しは急務~

投資における概念のひとつにフェアバリュー(適正価格)があります。株式投資においては、純資産額や収益性、成長性等の評価基準に照らして所謂公正価値が算出されます。企業買収や不動産取引においても、フェアバリューの算定は大前提となります。一方、為…

仕組債の終焉〜主犯格はEB債〜

証券会社が相次いで日経リンク債やEBに代表される仕組債の販売停止に踏み切っています。先行したのはメガバンク傘下のSMBC日興証券やみずほ証券。ブロックトレードで重大な法令違反をやらかしたSMBC日興証券は、早々と金融庁に白旗を上げた格好です。これま…

オリンパスの生物顕微鏡MIC型を懐かしむ~オリンパスが科学事業売却へ~

Bloombergニュースのヘッドライン<オリンパス 科学事業を4277億円でベインキャピタルに売却ー医療分野に集中>(8月29日)を見て、小学生の頃、両親にねだって買ってもらったオリンパス製生物顕微鏡MIC型のことを思い出しました。立派な木箱に収まった懐か…

"FIRE"本のエッセンス(後篇)~「複利は人類最大の発明である」~

投資の入門書には必ずといっていいほど特殊相対性理論の提唱者にして天才理論物理学者アインシュタイン博士の「複利は人類最大の発明である」という言葉が引用されています。云うまでもなく「複利」とは「元本」だけではなく「利息」が「利息」を生むことを…

”FIRE”本のエッセンス(前篇)

最近、30代から40代の知人女性(株式投資未経験者か投資歴1年前後)数名にタレントの厚切りジェイソンさんが出版した『ジェイソン流お金の増やし方』(ぴあ・2021年11月刊)を勧めたところ、「やっぱりSP500を使ったインデックス投資なんですね」と要領を得…

引き上げが相次ぐ米長期金利の年末見通し~ゴールドマンは3.3%に引き上げ~

昨年3月から米ドル買いに着手、投資ポートフォリオの外貨建て比率を40%まで引き上げる目標を立てました。5月の連邦公開市場委員会(FOMC)において、米国連邦準備制度理事会(FRB)は、政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を0.75~1.00%と…

ブックレビュー:『スルガ銀行 かぼちゃの馬車事件』(大下英治著・さくら舎)〜救世主・河合弘之弁護士が挑んだ白兵戦〜

書名を聞いてすぐにピンときた方は、金融や不動産関係のお仕事をされている方ではないでしょうか。この事件が発覚したとき、被害者に自分自身を重ねて、自責の念にかられた方も少なからずいることでしょう。バブル期に投資用マンションを購入して痛い目に遭…

武力によらない対ロシア経済制裁の絶大な効能

ロシアのウクライナ軍事侵攻を目の当たりにしながら、最強軍事大国・米国を率いるバイデン政権はウクライナへ派兵しないと公言しています。ピーク時に9万人もの兵士を派遣していた米国は、アフガニスタン撤退に20年の歳月を費やしました。ベトナム戦争以来、…

<実質実効為替レート>から読み解く円の実質購買力~<ビッグマック指数>は主要10か国中最低水準~

1月21日付け日経朝刊に掲載された円の実質購買力に関する記事はかなりショッキングな内容でした。<円通貨の実質購買力、50年前の水準に後退>という見出しは相当なインパクトだったと思います。日経新聞の中心的購読者であるビジネスマンでさえ、半信半疑だ…

米ドル建て劣後債投資のススメ

新年に入り、米国株式市場の雲行きが怪しくなってきました。米長期金利が1.8%台後半へ水準を切り上げてきたことに伴い、将来収益で評価して割高感の出るグロース株を中心に売りが売りを呼ぶ展開となっています。19日後場、前日のダウ平均大幅下落を受けて、…

GAFA帝国の次なる支配戦略~さらなる成長に死角はないのか?~

<GAFA>には様々な異名があります。本拠地米国メディアは"Big Four"や”Big Tech(或いは単にTech)”と呼び習わすのが通例です。一説では、仏ルモンド紙が最初に<GAFA>という新語を使ったのだそうです。売上・利用者数が桁違いの規模を誇る<GAFA>は今や…

2021年|日米株式市場を振り返る~日米の埋め難い企業間格差~

世界上位1000社の時価総額は約8900兆。12月26日付け日経朝刊によれば、その過半53%を占めるのがGAFA+Mに代表される米国企業なのです。初の5割超だそうです。ここまでは予想どおりなのですが、時価総額比、驚く勿れ、日本企業は全体の5%を下回っているのです…

自治体 X コード支払い(PayPayやau PAY等)によるポイント還元キャンペーンの謎

地域経済活性化のためと銘打って、自治体が次々とキャッシュレス決済によるポイント還元事業に乗り出しています。今年4月、港区が<VISIT MINATO応援キャンペーン>と称したポイント還元事業を行った際の還元率は決済金額の50%(ひとり上限5000円まで)と実…

日本株は「オワコン」なのか?

今日から師走入り。ようやく全国的に感染者数が落ち着いてきたかと思いきや、新型変異ウイルス<オミクロン>感染拡大懸念から11月最終営業日の内外株式市場は大荒れとなりました。日経平均は朝方400円以上値上がりして前日の買戻しの動きが活発化したのです…

「監視資本主義」社会の立役者デジタルプラットフォーマーの絶大なる影響力

2021年8月27日付け日経朝刊の<GAFA「日本株超え」>という見出しは衝撃的でした。2020年5月9日、同紙はGAFAの時価総額が東証一部(2170社)超えを報じてから、わずか1年あまりで日本株全体の時価総額を凌駕してしまったのです。足元、GAFAの時価総額は日…

超低金利時代に蔓延する金融ドラッグ汚染

最近、日経朝刊に<超低金利が招く老後危機>と題する記事が掲載されました。大規模な金融緩和のしわ寄せから、運用難に喘ぐ米国公的年金が運用成績を押し上げやすいレバレッジ運用(「梃子の原理」に倣い投資資金を借入金で膨らませること)に活路を見出し…

ソフトバンクG第5回劣後債の目論見書から分かる引受手数料~ソフトバンクGと金融機関の凭れ合い構造~

直近の日本国債10年物の年利回りは0.060%。100万円を10年国債に投資しても、年間わずか600円の利金しか得られない計算になります。一方、今月21日に発行される総額4050億円のソフトバンクグループ第5回利払繰延条項付・期限前償還条項付無担保社債(劣後特…

劣勢続きの日本の株式市場の見通しは昏いまま

5月29日付け日経新聞に掲載された<株失速が暴く企業の自力>と題する記事内容は目から鱗でした。かねてより日本企業の労働生産性の低さは指摘されていたものの、改めてOECD加盟37ヶ国中26位だと知らされると、一層、日本の株式市場への不信感が募ります。各…

小説家黒木亮さんの素顔

愛読者のひとりとして、日経夕刊の(全5回)に登場した黒木亮さんのインタビュー記事を興味深く拝見しました。10年前に読んだ『リスクは金なり』(講談社文庫)を慌てて引っぱりだしてきたら、かなり内容が重複していました。すっかり忘却の彼方だったので、読…

『お金の大学』に書き切れていないこと~フィナンシャルリテラシー獲得をめざして~

メルカリで買ったという『お金の大学』(定価1400円+税)と題する本を息子から手渡されました。投資銀行員だった父親の感想を聞きたいようです。著者である両@リベラルアーツ大学学長氏は、高校在学中に起業、20年以上にわたって本業(?)で稼ぎながらリべ大…

金投資が止まらない~足元の金先物価格は1860米ドル前後で推移~

凡そ3年半ぶりにほんの少し金地金を購入しました。先月8月4日終値でNY金先物価格が節目となる2000米ドル(=1トロイオンス)を突破し話題になりましたが、足元では1900米ドルを割り込み少し過熱感が和らいだからです。ニッセイアセットマネジメントのレポート(2…

貴金属価格が急騰~適正な金銀比価は奈辺にありや~

この1ヶ月で貴金属価格が凄まじい勢いで上昇しています。田中貴金属が毎日公表している1グラム当たりの円建て小売価格を7/28と前月末の6/30と比較してみると、急騰ぶりがよく分かります。特にこれまで60円前後で放置されてきた銀の価格上昇が突出しています…

やむなく損切り~伊藤忠によるファミマTOBの乱~

塩漬け銘柄のひとつ、ファミリーマート株(8028)が連日急騰しています。普段なら糠喜びするところですが、今回ばかりは、やるせない思いが募るばかりです。というのも、ファミマの筆頭株主で過半数の50.1%を握る伊藤忠が5800億円を投じ2300円でTOBを実施す…

米ブルックス・ブラザーズの経営破綻とWSの凋落

ブルックス・ブラザーズ(以下:「BB」)と聞けば、パリッとしたビジネススーツに身を包みウォールストリートを闊歩する投資銀行マンを思い浮かべます。ボタンダウンシャツを世に送り出したのもBBでした。古くはJFK、オバマ前大統領もBBを好んで着用するそうで…

物流系REITバブル~J-REIT市場の主役交代は本物か?~

今年に入って、J-REIT市場に大きな変化が見られます。2020年3月の新型コロナウイルス感染拡大に端を発したJ-REIT市場の崩落は凄まじいものでした。3月19日の東証REIT指数終値は1145.53まで急落、2月末の指数が2017.50だったのでわずか3週間で43%も下落した…

米国社会を蝕むトリクルダウンというウイルス

暴行死したジョージ・フロイドさんへの抗議デモが全米で拡大しています。こうした「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切)」運動に対抗して、「オール・ライブズ・マター(全ての命が大切)」とのスローガンを掲げてフロイド氏を攻撃する動きが活発…