戦史

三英傑のなかで誰が一番好きですか?

昨夜、NHK大河ドラマ『どうする家康』が最終回を迎えました。夢の中の光景でしょうか、家康と瀬名姫の視線の先に今日の平和そのものの東京の景色が広がっていたのがとても印象的でした。争いなき世の中の礎が出来たのは、紛れもなく家康の手柄です。戦乱の時…

山本五十六記念館と「海軍甲事件」

9月下旬の3連休にスノーピーク本社(三条市)キャンプフィールドで野営。滞在中、空いた時間を使って長岡市にある山本五十六記念館を訪れました。瓦葺きの思ったよりこじんまりとした建物がめざす記念館(写真・下)でした。開館前に駐車場は満車になり、次…

米国から届いたバンクシーの切手

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻開始から1年目にあたる今年2月24日、ウクライナでバンクシーのグラフィティをモチーフにした切手が発売されました。気がついたときには完売だったので、後日、ebayで見つけて落札しました。売主から届いた封筒(下)には…

映画『ヒトラーのための虐殺会議』(2023)で知る「ヴァンゼー会議」の恐るべき全容

第二次世界大戦中、ナチス・ドイツが主導したホロコーストの計画は、ベルリン郊外のヴァンゼー湖畔で開かれた所謂「ヴァンゼー会議」によってその方向性が決定づけられました。たった90分のこの会議が、やがて欧州を震撼させることになるホロコーストの発端…

「難民問題」から目を背ける日本人

11月12日放送の「混迷の世紀第12回 難民"漂流"人道主義はどこへ」と題したNHKスペシャルは、あまりに衝撃的な内容で戦慄を覚えました。「難民問題」は、かつてない深刻な局面を迎えています。一方、日本の難民認定数は世界で類を見ないほど少なく、2022年の…

領土変遷に見るパレスチナの歴史

ハマスの大規模攻撃から1ヶ月、ガザの死者数は1万人を超えたと伝えられます。イスラエルによる報復攻撃によって子どもが4000人以上死亡しています。「停戦はない」と強調するイスラエル側。地中海東岸・パレスチナにおける民族間の紛争に収束の兆しは見えま…

ブックレビュー|『列車にのった阿修羅さん』(いどきえり著・くもん出版)

劈頭こそ真珠湾攻撃で華々しい口火を切ったものの、太平洋戦争開戦から半年も経たない1942年(昭和17年)4月18日、日本は米軍による本土空襲に遭っています。16機編成の爆撃機隊を指揮したジミー・ドーリットル中佐に因んで「ドーリットル空襲」と呼ばれてい…

ロシアのウクライナ侵攻から1年|日本のメディアはなぜ「ロシア・ウクライナ戦争」と呼ばないのか?

ロシアが「ウクライナ侵攻」を開始したのは2022年2月24日のこと。1年を経ても収束する気配がまったく感じられません。ロシアとウクライナの軍事力の差は歴然です。ここまでウクライナが善戦できているのは、偏に西側諸国による大規模な軍事支援や財政支援が…

「対馬丸事件」の語り部・糸数裕子さん死す

今月5日、「対馬丸事件」の引率教師のひとりだった糸数裕子(いとかずみつこ)さんが亡くなったことを新聞紙面で知りました。糸数さんは、生還された引率教師5人の最後の生存者だったそうです。此処数年、沖縄戦の戦跡を訪ね乍ら「対馬丸記念館」へ足を向け…

2021年マイベストブックは『暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ』〜祝・第48回大佛次郎賞受賞〜

毎年、年末になると書評子が今年印象に残った本を新聞をはじめ各種メディアが取り上げます。これに倣って2021年のマイベストを問われたら、文句なしに『暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ』と答えるでしょう。作者・堀川惠子さんは、広島テレビ女性初の…

NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』第17回に滂沱の泪~祖母ひさ・母小しず死す~

11月1日からスタートしたNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』は、三世代の女性たちが紡ぐ100年のファミリーストーリー。子役で始まりほどなくヒロインがバトンを受け継ぐこれまでの物語とは異なる筋立てだけに、これからの展開が楽しみでなりません。…

戦争のリマインダー(2)~映画『ミッドウェイ』再び~

昨年9月に映画館に足を運んで以来、小一年、ご無沙汰です。未だにワクチン接種が済んでいないので、引き続き外出自粛モードで臨んでいるからです。その間、amazon prime videoやwowowオンデマンドの視聴機会が増えたので、不満が昂じているわけではありませ…

戦争のリマインダー(1)〜2021年NHK終戦ドラマ「しかたなかったと言うてはいかんのです」〜

毎年、終戦記念日が近づくと、地上波やBSで太平洋戦争をテーマにしたドラマや映画が放映されます。今年は13日にNHKが放送した九州帝大医学部生体解剖事件を題材にした終戦ドラマ「しかたなかったと言うてはいかんのです」が一番心に響きました。鳥居太一役の…

6月23日は沖縄「慰霊の日」

今日、6月23日は沖縄「慰霊の日」(1965年に沖縄県が制定した記念日)です。沖縄ではこの日はお役所も学校もお休みになります。上皇陛下は、「終戦記念日」、「広島原爆の日」、「長崎原爆の日」とともに「後に忘れてはならない4つの日」だと表明されています…

半藤一利さん逝く

1月12日に作家の半藤一利さん(享年90歳)が他界されました。朝日新聞社会面は、「半藤一利さん死去」に続けて「90歳作家 昭和史に光」と小見出しを打って大きく取り上げました。15日には、共著の多数ある盟友のノンフィクション作家保坂正康氏が「半藤一利…

GoToトラベル~沖縄篇:旧帝国陸軍第32軍司令部壕を訪ねて~

10月最終週、空路で石垣島から21時過ぎに那覇へ入り、翌朝から初めて沖縄を訪れるという家人を戦跡へ案内して廻りました。観光名所を訪ねる前に先ずは太平洋戦争末期に想像を絶する激戦地と化した沖縄の過去を肌で感じてもらいたいと思ったからです。ホテル→…

熾烈を極めた「ガダルカナル島の戦い」に勝機があったとは!?〜敗因は大本営の兵站軽視にあり〜

毎年、終戦記念日が近づくと、太平洋戦争をテーマにNHKが実に見応えのある番組を放送してくれます。戦後75年も経てば、常識的には史実の検証は困難になる一方にもかかわらず、驚くべき第一級の資料がしばしば発掘されることに驚かされます。アメリカ国立公文…

サーロー節子さんのドキュメンタリー映画『ヒロシマへの誓い サーロー節子とともに』

あと2日で75回目の終戦記念日が訪れます。75年という歳月に広島市民とりわけ被爆者の方々は格別の思いを抱くのではないでしょうか。原爆投下直後、<75年は草木も生えぬ>と言われた広島が、市民の弛まぬ努力によって信じられないような奇跡の復興を遂げ、平…

6月23日は沖縄「慰霊の日」~沖縄決戦から75年~

6月23日は沖縄の「慰霊の日」です。75年前、3ヵ月に及んだ沖縄における日本軍の組織的戦闘が終了した日に当たります。この日の午前4時30分、摩文仁司令部壕海岸側出口において、沖縄守備にあたった第32軍司令官牛島満中将(57歳)と参謀長長勇中将(49歳)が…

表裏の関係にあるサンフランシスコ平和条約と旧日米安保条約

先月下旬放映されたテレビ東京開局55周年特別企画のスペシャルドラマ「 アメリカに負けなかった男~バカヤロー総理 吉田茂~」をタイムシフトで視聴しました。鶴瓶師匠が吉田茂に扮するとあって初めは少々驚きましたが、見慣れてくると、風貌が似ていなくも…

「天皇陛下万歳」三唱への違和感

2019年11月9日、夕刻から開催された天皇陛下即位を祝う「国民祭典」祝賀式典の最後に、伊吹文明・奉祝国会議員連盟会長による万歳三唱があり、参加者の唱和が続きました。天皇皇后両陛下が退出されるまで幾度となく繰り返された万歳三唱。この異様な光景を見…

映画「パール・ハーバー」(2001年)唯一の見所ドーリットル空襲

太平洋戦争の口火を切った真珠湾奇襲攻撃を題材にした2001年制作の映画「パール・ハーバー」を、最近、WOWOWで視聴しました。真珠湾奇襲攻撃といえば、1970年に公開された日米合作の「トラ・トラ・トラ!」。中高時代に繰り返し観た「トラ・トラ・トラ!」の…

「ノモンハン事件」は無残な負け戦だった!

太平洋戦争の導火線は、戦端を切った真珠湾攻撃ではなく、歴史上「満州事変」(1931年)とか「支那事変」(1932年)と呼び習わされる局地的紛争にまで遡って考える必要があります。戦史研究の第一人者半藤一利氏によれば、連合国側と戦争不可避な状態に突入し後…

映画「ダンケルク」に見る撤退戦の意義

お昼過ぎまでボランティア、その足でTOHOシネマズ日本橋へ。TCXと呼ばれるエクストララージスクリーンを擁した都内でも屈指の設備を誇る映画館だけに、「ダンケルク」のような史実に基づいた戦争映画を見るにはうってつけのスポットなのです。一度、IMAXやTC…

インパール作戦の戦場は想像を絶する要害だった!

終戦記念日に放映されたNHKスペシャル「戦慄の記録 インパール作戦」を観て、しばらく茫然自失状態に陥りました。8月15日から10日余り経って少し気持ちの整理がついたので、番組の感想も交えて史上最悪の陸戦と呼ばれるインパール作戦について触れてておきた…

島尾ミホ原作『海辺の生と死』の映画化

舞台は奄美群島の加計呂麻島(かけろまじま)、第二次世界大戦末期に朔中尉率いる海軍魚雷艇部隊がやってきます。本土から遠く離れた島には子供たちの島唄がこだまし、平和でおだやかな暮らしが保たれています。朔中尉(永山絢斗)は九州帝大で東洋史を修め…

ナチス映画が流行る理由(わけ)

近年、ナチスやヒトラーを扱った映画が次々と劇場公開されています。今年に入ってもその勢いは止まらず、すでに封切された「アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男」をはじめ、2月には「アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発」、夏にはエ…

NHKスペシャルドラマ「東京裁判」(1〜4話)の摘録

先週12日から4夜連続で放映されたNHKのスペシャルドラマ「東京裁判」は、極東国際軍事裁判(以下、「東京裁判」)のために来日した判事11名の2年半に及ぶ格闘を描いたものです。裁かれることになったA級戦犯ではなく、人種も国籍も異なる判事ひとりひとりに…

”The Monuments Men"の日本公開に寄せて

2014年に米国で製作された映画”The Monuments Men”(日本語タイトルは「ミケランジュロ・プロジェクト」)の本邦劇場公開が中止になって2年、このたびWOWOWでリリースされたのでじっくり自宅鑑賞したところです。昨年秋、一部の劇場でようやく上映されDVDも…

NHKスペシャル「決断なき原爆投下」で知るトールマン大統領の変節

今日は長崎原爆の日。71年前の午前11時2分、B29爆撃機ボックスカーから「ファットマン」が長崎に投下されました。当初の爆撃目標は小倉でしたが天候悪化のため急遽長崎に矛先が向けられ、結果、長崎の推定人口24万人のうち14.9万人が命を喪いました。「ファ…