ロシアのウクライナ侵攻から1年|日本のメディアはなぜ「ロシア・ウクライナ戦争」と呼ばないのか?

ロシアが「ウクライナ侵攻」を開始したのは2022年2月24日のこと。1年を経ても収束する気配がまったく感じられません。ロシアとウクライナの軍事力の差は歴然です。ここまでウクライナが善戦できているのは、偏に西側諸国による大規模な軍事支援や財政支援があったからです。宛ら代理戦争です。ウクライナへの支援額は総額で1436億ユーロ(日本円で21兆円弱)に達したと云われます。死者数は両国の公式発表に大きな食い違いがあるので全容は不明ですが、両国の死者が10万人を優に超えていることは確かです。

冒頭で「ウクライナ侵攻」と書きましたが、ウクライナ側はロシアによる「侵略」だと主張し、ロシア政府は一貫して「特別軍事作戦」と呼称しています。NHKをはじめ日本のメディアは、示し合わせたかのように「ウクライナ侵攻」と報じています。「侵攻」は戦争がすでに始まり軍が一定の地域へ進軍する際には適切ですが、突然ウクライナ領土へ進軍したロシアの行いは明らかに「侵略」です。

太平洋戦争の口火が切られた1941年12月8日より4年以上前に、盧溝橋事件を発端に日本(当時は大日本帝国)は中華民国と軍事衝突しています。事実上の「戦争」にもかかわらず、日本政府は宣戦布告せず「支那事変」と呼称しました。パリ不戦条約(1928年)に調印しているので、「戦争」ではないと強弁する必要があったからです。太平洋戦争が始まり戦局が悪化し始めると、「撤退」を「転進」と言い繕うようになります。「ウクライナ侵攻」も然りで、日本のメディアには戦前からのこうした曖昧な物言いを改める意識が希薄なようです。

米主要メディアはRussia-Ukraine War(露ウ戦争)で統一しています。資本主義陣営に与し米軍の庇護の下にある日本では、欧米メディアに同調し、プーチン大統領を糾弾する空気が支配的です。一方、さる2月23日のロシア即時撤退を求める国連決議において、反対したのは7ヶ国、棄権した国はインドや中国を含め32ヶ国を数えます。国連加盟193ヶ国のうち、無投票も含めればロシアへ配慮した国が50ヶ国も存在します。

プーチン大統領は、「ウクライナは単なる隣国ではなく、歴史、文化、そしてかけがえのない精神性の一部」だと主張しています。歴史的に見れば、ロシアが希求してやまなかったのは広大な領土というよりも不凍港でした。ロシアの悲願だったクリミア、ウクライナ、1年中凍らない黒海沿岸を奪い取ったのはエカチェリーナ2世です。さらに、ロシアこそが東ローマ帝国の正教・正教会の正統な継承者であるという自負が存在します。そうした地域を再び併合し、かつてのロシアの耀きを取り戻したいと考えるプーチンが(ロシア国民から)圧倒的に支持されている事実から目を背けては、この戦争の本質は見えてきません。

ウクライナ侵略」から1年、国際社会の対立と分断の根が限りなく深いことをこれでもかと思い知らされるばかりです。