新プロジェクトX始動〜三陸鉄道復旧秘話に涙〜

東日本大震災から3年後の2015年4月、三陸沿岸を走る三陸鉄道(三鉄)の全面運行再開をメディアが大々的に報じました。大漁旗や三鉄のロゴをあしらった旗を振って歓迎する沿線住民の姿がとても印象的で記憶に残っています。

18年ぶりに復活したNHKの新プロジェクトX第3回《約束の春 三陸鉄道 復旧への苦闘》は、落涙ものでした。MCを務めるふたりも、番組終盤、宮古と久慈を結ぶ総延長71kmの北リアス線最難関工事箇所を担当した筒井光夫(東急建設所長)さんをスタジオに迎え、涙を浮かべていました。


(出典:新潮社・東日本大震災の記録より)

津波に襲われた島越(しまのこし)駅周辺では、橋脚が崩れ、コンクリート高架上にあったホームと共に駅舎が跡形もなく流されてしまいました(写真・上)。先細りの湾奥深くまで勢いよく海水が注ぎ込み、途轍もない破壊力が生じたからです。復旧には最低でも6年を要すると考えられました。

復旧工事に尽力したいと全国から作業員が集まったといいます。筒井さんは最も工事が難航するであろうと予想された10.5kmの責任者を務めます。担当区域は砂や岩の軟弱地盤、地盤改良は困難を極め、工期を少しでも短縮するために降雪期も休まず工事が継続されました。筒井さん以下、難工事に従事した作業員の皆さんは、家族と離れ、過酷な飯場暮らしを強いられたに違いありません。電気が確保できるディーゼル車内で寝泊まりした三鉄職員然りです。新プロジェクトXも3年に及んだ工事現場に密着できるはずもありません。復旧工事が完成するまでの艱難辛苦に関しては、想像力を極限まで働かせて補うしかないのです。

被災当時の三鉄社長が言うように、ローカル鉄道の廃線に伴い地域そのものが消失する危機が現実化しています。自然の脅威が再び三陸鉄道を襲うかも知れません。それでも、三鉄の灯を消すまいと再び地域の人々は立ち上がるのでしょう。活字では絶対に伝わらない復旧秘話を知って心が震えるほど感動しました。不屈の闘志で三陸鉄道の復旧にあたった関係者の皆さんを心から讃えたいと思います。

エンディング・テーマ「ヘッドライト・テールライト」の余韻があまりに切ない。