読書
最近、立て続けにアートをテーマにした週刊誌や単行本を読む機会がありました。<緩和マネーで爆騰!アートとお金>と題した週刊東洋経済(2021/2/20)は、経済専門誌が特集しているだけあって、市場規模から説き起こすあたり、さすが要を得ています。そもそ…
2011-3-11 PM2:46 自宅でインテリアコーディネーターと打ち合わせをしていました。2ヶ月後に引越しを控えていたからです。ちなみに、この日は金曜日で六曜は友引でした(曜日の感覚は忘れがちです)。在宅だったので帰宅難民にならずに済みました。経験した…
ダン・ブラウンの世界的ベストセラー『ダ・ヴィンチ・コード』や『天使と悪魔』の翻訳で知られる越前敏弥氏の『翻訳百景』(角川新書)を読んで、初めて翻訳家という仕事の実相が見えてきました。翻訳は、大別すれば、実務翻訳(又は産業翻訳)、映像翻訳(字…
先月下旬、三鷹ネットワーク大学で「父・吉村昭を振り返る」と題した講演会が開催されました。講師は吉村司氏(故吉村昭・津村節子夫妻の長男)。幸い、当選したので会場で聴講(抽選制)できました。興味深い内容でしたので、吉村文学に関心のある方は、3/2…
2021年は、向田邦子さんが旅行先台湾で航空機事故に遭い急逝されてから40年目にあたります。たまたま、武蔵野プレイスから借りてきた『名文探偵、向田邦子の謎を解く』(2011年・いそっぷ社刊)を読んでいる最中にそのことに気がつきました。ちなみに、著者…
あまりにも切なく物哀しい物語だったので、頁をめくる手が止まり、なかなか前へ進むことができませんでした。増刷されたばかりの文庫本の帯にはこう書かれています。<全米図書賞受賞!全世界が感動した「一人の男」の物語>これほど本書に似つかわしくない…
今年、4年間の大学生活を送った街を久しぶりに訪れ下宿先だった2か所へ足を運ぶと、おんぼろアパートは立派なマンションに様変わりしていました。当時は、風呂なし・共同便所が至極当たり前の時代でした。1Rマンションに住んで優雅な暮らしを謳歌している今…
3連休初日、敬愛する井上ひさしの没後10年展 を見たくて、3年ぶりに世田谷文学館を訪れました。没後30年の「澁澤龍彦 ドラコニアの地平」展以来となります。井上ひさしとの出会いは、文学作品ではなく、NHK総合テレビの人形劇「ひょっこりひょうたん島」。娯…
最近、村上春樹の小説は進んで読む気がしません。2009年〜2010年にかけて刊行された『1Q84』シリーズを分岐点に、村上ワールドからは遠ざかっています。デビュー当時の瑞々しい作品群はともかく、今では、肩の力を抜いた軽快な語り口のエッセイやマラソン・…
今年もあと3ヶ月半、2月下旬から俄かに拡大の一途をたどったコロナ禍は8ヶ月目に突入したことになります。マスク着用マストの不自由なニューノーマルは一体いつまで続くのでしょうか。副作用のないワクチンが一刻も早く開発され、国民に行き渡ってにピリオド…
TV番組は専らタイムシフトで視聴することにしています。CM時間帯を「スキップ=CM飛ばし」できればかなりの時間の節約になるからです。ところが、時々、飛ばすのが勿体ないような秀逸なCMに出喰わすことがあります。そんなときは繰り返し再生して楽しむこと…
8/10の昨日は7回目の「山の日」。五輪特措法で2020年は1日前倒しになったのでしたね。「海の日」が祝日なら「山の日」もあって良いと思います。さて、百名山にアタックする場合、登山の前後どちらかで登山者のバイブル『日本百名山』(1991年刊行の新装版)と…
今月の「100分de名著」は吉本隆明の『共同幻想論』(1968年)を取り上げています。戦後最大の思想家と言われる吉本隆明の難解極まる代表作を再読する機会を番組が与えてくれたことに感謝しています。昨年、NHK出版から刊行された『考える教室 大人のため哲学入…
長きにわたって沁みついた島国根性のせいでしょうか、日系メディアの海外情報発信力は頗る頼りなく、英国に限らず海外に居住する日本人の暮らしぶりは一向に伝わってきません。比較的感染者の少ない日本に比べ、遠い異国の地に暮らす在留邦人は、オリンピッ…
WOWOWの予告編でプロ棋士瀬川晶司さんをモデルにした映画だと知らなければ、危うくスルーするところでした。『泣き虫しょったんの奇跡』(2018年9月公開)は、現在プロ棋士として活躍中の「しょったん」こと瀬川晶司さんの自伝に基づいています。将棋界では今…
朝日新聞夕刊に連載中の「三谷幸喜のありふれた生活 (#995)」(2020/6/11)を読んで、三谷幸喜さんを幾度も唸らせたという向田邦子さんについて触れてみたくなりました。当代きっての喜劇作家が向田邦子さんを絶賛するとは意外な感じもしますが、連載エッセイ…
最近、WOWOWのオリジナルドラマ「鉄の骨」(全5話)が完結しました。これまで数々の池井戸潤作品がドラマ化されていますが、失敗作を観たことがありません。映像化によって原作の持ち味が損なわれるケースも散見されるだけに、池井戸ドラマの高視聴率は驚異的…
NHK BSプレミアム新日本風土記スペシャル「松本清張 鉄道の旅」(2020/5/8放送) を見ながら、松本清張は同時代の世相や空気を切り取る才能に長けた作家だなとあらためて感心しました。おまけに、ブックタイトルの付け方が実に上手い。「点と線」、「ゼロの焦…
十数年前に『受験の神様』(坂口幸世著・朝日新聞社刊)を読んだとき、深く脳裏に刻まれた蓮實重彦東大総長の卒業式告辞(2000年3月25日)を引用します。「高等教育期間が授与する三つの学位の一つである学士という称号の品質保証期間は、せいぜい三年、長くて五…
緊急事態宣言発出後、大手書店は軒並み休業。やむなく、吉祥寺で唯一営業している小規模書店へ向かいました。NHKテキスト(ラジオ)「実践ビジネス英語」5月号を買うためです。ところが、普段なら平積みしてあるはずの語学テキスト5月号が殆ど見当たりません…
『つばき文具店』が2017年の本屋大賞候補にノミネートされたとき、本ブログでも取り上げたように自分のなかでは一押しだったのですが、結果は残念ながら4位でした。今回の意欲作『ライオンのおやつ』こそ、大賞1位にと念じていましたが惜しくも2位、1位はBL…
主人公は25歳、心優しき研修医1年目の雨野隆治。通称アメちゃんの出身地は鹿児島県、勤務先は東京下町にある牛之町病という設定です。鹿児島大学医学部卒業後、都立駒込病院で研修した作者中山祐次郎さんの実体験が色濃く投影していることは間違いありません…
2月29日(土)、<作家・大西巨人-「全力的な精進」の軌跡->展を見ようとと二松学舎大学を訪れました。午後に予定されていた「父親としての大西巨人」と題する息子大西赤人氏の講演は、新型コロナウイルスの感染拡大防止措置の一環で中止になってしまいまし…
昨年9月に出版された本書は、すでに50ヵ国以上で翻訳され世界的に注目を集めており、2020年の今年、BBCドラマ化が予定されています。原題は”The Tatooist of Auschwitz”、ロンドンで出版されました。著者ヘザー・モリスは、過酷な運命を生き抜いたルドウィグ…
会期終了間際に、JR目黒駅西口徒歩1分の好立地に所在する久米美術館を訪れました。この美術館をご存じの方は相当な博物館通ではないでしょうか。開館は1982(昭和57)年10月。過去の展覧会記録を遡ると、東京美術学校教授も務めた洋画家久米桂一郎氏(写真下…
2019年は中島敦生誕110年。明治42(1909)年生まれの作家といえば、早逝した中島敦(1909-1942)や太宰治に加え、松本清張、大岡昇平、埴谷雄高と錚々たる顔ぶれが頭に浮かびます。生誕から100年以上経つというのに、中島敦の『山月記』や太宰治の『走れメロ…
原題は”The Climb”、日本版副題はエヴェレスト大量遭難の真実。1996年5月10日、8名の登山家の命を奪ったエヴェレスト史上最悪の遭難事故の真相に迫ったノンフィクションです。20年以上前に読んだ記憶はあるのですが、残念ながら、今や本書は絶版。映画「エヴ…
橘玲さんは、かねてより、サラリーマン人生の危うさに警鐘を鳴らしてきた論客のひとりです。本書はタイトルこそセンセーショナルで、「上級国民」は事実上の「一夫多妻」なのだと指摘して興味をそそろうとしているかに見えますが、内実は至極真っ当な現代社…
2017年に放送された NHK 連続ドラマ「ツバキ文具店〜鎌倉代書屋物語〜」(全8回)は、手っ取り早い通信手段であるメールやLINEが隆盛の今日、手紙の奥深い魅力を再発見させてくれる滋味溢れる内容でした。視聴率は平均で5%後半。民放の人気ドラマに比べるとか…
先週末、日本近代文学館(目黒区駒場)で開催中の「生誕110年太宰治 創作の舞台裏」展を訪れました。界隈にはお気に入りの日本民藝館がありますから、駒場は決して疎遠な場所ではありません。ところが、ついでに立ち寄ればいいものの、日本近代文学館とはずい…