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読書

「親ガチャ」の当たりは十人十色~裕福な家庭に生まれることが当たりとは限らない~

最近、全国紙にも頻繁に登場するようになった「親ガチャ」という若者言葉、。中高年には耳慣れないこの言葉、ご存じない方のために含意を解説しておきたいと思います。カプセル入りの「ガチャ」から何が飛び出すか分からないように、<どんな親の元から生ま…

『山小屋ガールの癒されない日々』で知る山小屋のリアルな日常

3年前、山小屋が大の苦手だという友人T君を説得して見晴(尾瀬ヶ原)にある弥四郎小屋に1泊、至仏山に登ったことがあります。テント派のT君は人見知りするタイプで山小屋で見知らぬ登山者と一晩を共にするのは苦痛だというのです。ひと口に山小屋といっても…

J.K.ローリングさんのハーバード大学卒業記念講演録|『とてもよい人生のために』(静山社)

隣駅南口の目の前にある図書館、<武蔵野プレイス>へ行くときは、必ず貸出点数上限の10冊を借りてくることにしています。明確に借りる本が決まっていない場合は、あてどなく図書館をほっつき歩きます。そんなときにかぎって思いもよらない素敵な本との出会…

自民党総裁候補の政策論争に見る<「現実」主義の陥穽>

<「現実主義」の陥穽>と括弧書きにしたのは、この言葉が昭和を代表する政治学者丸山真男(1914-1996)の論文タイトルだからです。同論文を所収する『現代政治の思想と行動』(未來社)は、昔は法学部生の必読書のひとつで、自分も貪るように読んだ記憶がありま…

祝ギネス世界記録:「ゴルゴ13」単行本巻数は「こち亀」を抜いて世界一に

「こち亀」の「週刊少年ジャンプ」連載が終了したのは2016年。「こち亀」の単行本全200巻を「ゴルゴ13」(連載開始は1968年)が抜き去ったと知って感慨を新たにしているところです(現在202巻)。作者のさいとう・たかを氏は84歳、体力が続くかぎり描き続け…

「監視資本主義」社会の立役者デジタルプラットフォーマーの絶大なる影響力

2021年8月27日付け日経朝刊の<GAFA「日本株超え」>という見出しは衝撃的でした。2020年5月9日、同紙はGAFAの時価総額が東証一部(2170社)超えを報じてから、わずか1年あまりで日本株全体の時価総額を凌駕してしまったのです。足元、GAFAの時価総額は日…

『藤井聡太論 将棋の未来』~AIを超えて~

『藤井聡太論』(講談社+α新書)の著者は、日本将棋連盟会長を歴任された谷川浩司九段。この本を読もうと思ったきっかけは、昨年7月、棋聖戦5番勝負に挑んだ藤井七段が第2局58手で指した「△3一銀」が「AI超え」と呼ばれるようになったことです。進化を重ねる…

立花隆さんの後悔〜森羅万象への尽きることのない好奇心の代償〜

立花隆さんの著作を貪るように読んだ時期がありました。20代で出会った『宇宙からの帰還』(1983年)を皮切りサイエンスの世界に切り込んで次々と刊行される氏の著作は殆ど目を通したはずです。どこまで理解できたかは甚だ心許ないのですが、日本人ノーベル賞…

ブックレビュー:団鬼六の異色評伝『赦す人』

稀代の官能小説家団鬼六(だんおにろく)の著作を一冊も読んだことはありません。氏の作品といえばかろうじて映画化された『花と蛇』を知る程度です。最近、愛読作家のひとり大崎善生(おおさきよしお)の旧作『赦す人』(2012年刊行)を手にする機会があっ…

眺めているだけで楽しくなる『解剖図鑑シリーズ』

建築専門出版社エクスナレッジ社が刊行する『解剖図鑑シリーズ』をご存知でしょうか。このシリーズの存在を知ったのは2017年の夏。近所のジュンク堂書店をブラブラしていたときに『歌舞伎の解剖図鑑』(絵と文:辻和子)(2017年7月28日初版第1刷)を見つけたと…

14サミッター竹内洋岳さんの『下山の哲学』(太郎次郎社)を読む

2012年に日本人として初めて8000m級14座完全登頂を果たした竹内洋岳(ひろたか)さんは、翌2013年に植村直己冒険賞を受賞した日本を代表するアルピニストのひとりです。『下山の哲学』というタイトルに惹かれて、本書に手を伸ばしました。1984年にマッキンリー…

小説家黒木亮さんの素顔

愛読者のひとりとして、日経夕刊の(全5回)に登場した黒木亮さんのインタビュー記事を興味深く拝見しました。10年前に読んだ『リスクは金なり』(講談社文庫)を慌てて引っぱりだしてきたら、かなり内容が重複していました。すっかり忘却の彼方だったので、読…

『美術の経済』(小川敦生著・インプレス)で知る美術品売買の舞台裏~日本人は美術品を買わない~

最近、立て続けにアートをテーマにした週刊誌や単行本を読む機会がありました。<緩和マネーで爆騰!アートとお金>と題した週刊東洋経済(2021/2/20)は、経済専門誌が特集しているだけあって、市場規模から説き起こすあたり、さすが要を得ています。そもそ…

東日本大震災から10年に思う

2011-3-11 PM2:46 自宅でインテリアコーディネーターと打ち合わせをしていました。2ヶ月後に引越しを控えていたからです。ちなみに、この日は金曜日で六曜は友引でした(曜日の感覚は忘れがちです)。在宅だったので帰宅難民にならずに済みました。経験した…

『翻訳百景』で知る翻訳家という仕事

ダン・ブラウンの世界的ベストセラー『ダ・ヴィンチ・コード』や『天使と悪魔』の翻訳で知られる越前敏弥氏の『翻訳百景』(角川新書)を読んで、初めて翻訳家という仕事の実相が見えてきました。翻訳は、大別すれば、実務翻訳(又は産業翻訳)、映像翻訳(字…

吉村昭の歴史小説の舞台裏~「父・吉村昭を振り返る」講演録より~

先月下旬、三鷹ネットワーク大学で「父・吉村昭を振り返る」と題した講演会が開催されました。講師は吉村司氏(故吉村昭・津村節子夫妻の長男)。幸い、当選したので会場で聴講(抽選制)できました。興味深い内容でしたので、吉村文学に関心のある方は、3/2…

向田邦子没後40年特別イベント「いま、風が吹いている」最終日@青山・スパイラル

2021年は、向田邦子さんが旅行先台湾で航空機事故に遭い急逝されてから40年目にあたります。たまたま、武蔵野プレイスから借りてきた『名文探偵、向田邦子の謎を解く』(2011年・いそっぷ社刊)を読んでいる最中にそのことに気がつきました。ちなみに、著者…

柳美里著『JR上野駅公園口』を読んで~上野の杜で覚える違和感の正体~

あまりにも切なく物哀しい物語だったので、頁をめくる手が止まり、なかなか前へ進むことができませんでした。増刷されたばかりの文庫本の帯にはこう書かれています。<全米図書賞受賞!全世界が感動した「一人の男」の物語>これほど本書に似つかわしくない…

ユニクロ創業者柳井正氏の自叙伝にして最良の経営哲学書『一勝九敗』(新潮文庫)を読んで

今年、4年間の大学生活を送った街を久しぶりに訪れ下宿先だった2か所へ足を運ぶと、おんぼろアパートは立派なマンションに様変わりしていました。当時は、風呂なし・共同便所が至極当たり前の時代でした。1Rマンションに住んで優雅な暮らしを謳歌している今…

体験的井上ひさし伝〜「没後10年井上ひさし展-希望の橋渡しする人」展より〜

3連休初日、敬愛する井上ひさしの没後10年展 を見たくて、3年ぶりに世田谷文学館を訪れました。没後30年の「澁澤龍彦 ドラコニアの地平」展以来となります。井上ひさしとの出会いは、文学作品ではなく、NHK総合テレビの人形劇「ひょっこりひょうたん島」。娯…

たかがTシャツされどTシャツ〜『村上T』を読んで〜

最近、村上春樹の小説は進んで読む気がしません。2009年〜2010年にかけて刊行された『1Q84』シリーズを分岐点に、村上ワールドからは遠ざかっています。デビュー当時の瑞々しい作品群はともかく、今では、肩の力を抜いた軽快な語り口のエッセイやマラソン・…

禅語に学ぶ〜「日日是好日」&「独坐大雄峰」〜

今年もあと3ヶ月半、2月下旬から俄かに拡大の一途をたどったコロナ禍は8ヶ月目に突入したことになります。マスク着用マストの不自由なニューノーマルは一体いつまで続くのでしょうか。副作用のないワクチンが一刻も早く開発され、国民に行き渡ってにピリオド…

最高傑作:最新CM 「サントリー天然水」 X 宇多田ヒカル X 国木田独歩

TV番組は専らタイムシフトで視聴することにしています。CM時間帯を「スキップ=CM飛ばし」できればかなりの時間の節約になるからです。ところが、時々、飛ばすのが勿体ないような秀逸なCMに出喰わすことがあります。そんなときは繰り返し再生して楽しむこと…

深田久弥と谷川岳〜下山後の『日本百名山』読み返し〜

8/10の昨日は7回目の「山の日」。五輪特措法で2020年は1日前倒しになったのでしたね。「海の日」が祝日なら「山の日」もあって良いと思います。さて、百名山にアタックする場合、登山の前後どちらかで登山者のバイブル『日本百名山』(1991年刊行の新装版)と…

アフターコロナと吉本隆明の《共同幻想論》

今月の「100分de名著」は吉本隆明の『共同幻想論』(1968年)を取り上げています。戦後最大の思想家と言われる吉本隆明の難解極まる代表作を再読する機会を番組が与えてくれたことに感謝しています。昨年、NHK出版から刊行された『考える教室 大人のため哲学入…

リアルな新英国事情~『ワイルドサイドをほっつき歩け』(ブレイディみかこ著・筑摩書房)を読んで~

長きにわたって沁みついた島国根性のせいでしょうか、日系メディアの海外情報発信力は頗る頼りなく、英国に限らず海外に居住する日本人の暮らしぶりは一向に伝わってきません。比較的感染者の少ない日本に比べ、遠い異国の地に暮らす在留邦人は、オリンピッ…

映画『泣き虫しょったんの奇跡』と『将棋の子』(大崎善生著・講談社文庫)

WOWOWの予告編でプロ棋士瀬川晶司さんをモデルにした映画だと知らなければ、危うくスルーするところでした。『泣き虫しょったんの奇跡』(2018年9月公開)は、現在プロ棋士として活躍中の「しょったん」こと瀬川晶司さんの自伝に基づいています。将棋界では今…

三谷幸喜さんから向田邦子さんへの頌詞

朝日新聞夕刊に連載中の「三谷幸喜のありふれた生活 (#995)」(2020/6/11)を読んで、三谷幸喜さんを幾度も唸らせたという向田邦子さんについて触れてみたくなりました。当代きっての喜劇作家が向田邦子さんを絶賛するとは意外な感じもしますが、連載エッセイ…

連続ドラマW「鉄の骨」〜池井戸ドラマにハズレなし〜

最近、WOWOWのオリジナルドラマ「鉄の骨」(全5話)が完結しました。これまで数々の池井戸潤作品がドラマ化されていますが、失敗作を観たことがありません。映像化によって原作の持ち味が損なわれるケースも散見されるだけに、池井戸ドラマの高視聴率は驚異的…

松本清張再び〜鉄道の旅から映画「ゼロの焦点」へ〜

NHK BSプレミアム新日本風土記スペシャル「松本清張 鉄道の旅」(2020/5/8放送) を見ながら、松本清張は同時代の世相や空気を切り取る才能に長けた作家だなとあらためて感心しました。おまけに、ブックタイトルの付け方が実に上手い。「点と線」、「ゼロの焦…