”FIRE”本のエッセンス(前篇)

最近、30代から40代の知人女性(株式投資未経験者か投資歴1年前後)数名にタレントの厚切りジェイソンさんが出版した『ジェイソン流お金の増やし方』(ぴあ・2021年11月刊)を勧めたところ、「やっぱりSP500を使ったインデックス投資なんですね」と要領を得た反応があった一方、「まったく分からない」とお手上げ状態だった人もいて、少々戸惑っています。ジェイソンさんの本は、インデックスファンド投資中心にお金の増やし方を解説した本論にあたる第3章も含め、全体として決して専門的で難しい内容の本ではありません。第2章のジェイソン流節約哲学のいくつかは自分も励行している内容で、投資に回す資金の一部はこうした節約を通じて少しずつ捻出していくものです。例えば、コンビニで割高なペットボトルは買わない(外出するときは必ず水筒を持参する)・・・ジェイソンお前もかと頻りに頷いてしまいました。『ジェイソン流お金の増やし方』を図書館で借りた人は★★★、ブックオフやメルカリで購入した人は★★です。すぐに読みたくて新刊書で買った人は、読んだら直ちに中古市場で高値売却して投下資本の一部を回収すべきです。

今回は、ジェイソンさんの本も含めた”FIRE”本2冊を参考にして、エッセンスを分かりやすく整理してみようと思います。もう1冊はライオン兄さんこと山口貴大さんの『年収300万円FIRE』(KADOKAWA・2022年2月刊)です。令和になって俄かに注目を浴びるようになった”FIRE”とは、"Financial Independence, Retire Early"のイニシャルで、経済的自立と早期退職を意味します。現在のムーブメントはミレニアル世代が火付け役のようですが、アメリカでは90年代前半からすでに存在した概念です。昭和から平成にかけてのサラリーマンやOLは定年まで汲々として働きづめでした。”FIRE”とは、定年を迎えてまとまった退職金を受け取りようやく自由(時間的ゆとり)を得るようなパッシブなライフスタイルとは対極にある考え方です。言い換えると、現役世代のうちに早くから貯蓄率を高め、定年よりずっと早い退職をめざすプロアクティブな生き方と云っていいでしょう。

ポイントを整理すると次のようになります。

1)投資の開始は年齢が早ければ早いほど良い(”Opportunity Cost”<機会費用とは投資を選択しなかったために得られなかった利益のことで、スタートが遅くなればなるほど<機会費用>が大きくなります)

2)貯蓄率を高めて生活費25年分を貯蓄する(個人差はありますが一般に400万円X25年=1億円と言われます)

3)3ヵ月分の生活費は万一に備え現預金でキープ

4)投資はギャンブルではなく統計的に正しい行動である(下のグラフ:過去10年の日本と米国の代表的株価指数の推移)(日米両指数共に10年で3倍近い上昇率を示しています

5)貯蓄したお金は手数料の安い米国株価指数SP500で運用する(毎月一定額の天引き積立てが望ましい⇒所謂ドルコスト平均法によって時間分散を図る)(米国株式一択で良い)(煩わしい申告の手間を避けるために源泉ありの特定口座で運用する)

6)株式譲渡益や配当金にかかる税率は現在20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)

7)節税効果の高い「NISA」(年間上限120万・5年間)又は「つみたてNISA」(年間40万円・20年間)を最大限活用する

8) 9.11米国同時多発テロ(2001)・リーマンショック(2008年)・東日本大震災(2011)・コロナショック(2020)・・・暴落は必ず一定の周期で起きるが、株式市場はその都度一定の期間を経て回復している(暴落時は余裕があれば投資額を増やすべき)

9) 本業を大切にしポジションを上げる(昇進・昇格は昇給に繋がるから)と共に自分のスキルセットを生かした副業に積極的に取り組む

10)FIREやセミリタイアは目的ではなく手段である

ひとつの分野を極めようと思ったとき、最低10冊はその分野の本を読むことにしています。IT分野や金融・投資についても同じことが言えます。漫然と本を読むだけで飽き足らない人には、合格率40~50%前後のFP2級あたりをめざして体系的学習に励むことをお勧めします。