引き上げが相次ぐ米長期金利の年末見通し~ゴールドマンは3.3%に引き上げ~

昨年3月から米ドル買いに着手、投資ポートフォリオの外貨建て比率を40%まで引き上げる目標を立てました。5月の連邦公開市場委員会(FOMC)において、米国連邦準備制度理事会FRB)は、政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を0.75~1.00%とし、6月1日から保有資産圧縮を開始すると全会一致で決定しました。昨年の段階では、ここまで米長期金利が上昇するとは思いもしませんでした。結果的に先回りとなったドル買いは悪くない決断でした。一方、黒田日銀は2月14日に10年物国債を対象に0.25%の利回りで無制限に買い取る指値オペを3年ぶりに実施しました。各国金利が急上昇しているにもかかわらず、日銀だけが下落圧力のかかった国債を買い支える挙に出たため円売りが加速、その後も、黒田総裁が声明を発する度に外国為替市場は敏感に反応し、ドル高が進みました。

こうした流れを受けて、米ゴールドマン・サックスは年末の米国10年債の利回り見通しを2.70%から3.30%へ大幅に引き上げました。ゴールドマンは3月24日に年末金利水準を2.25%から2.70%に引き上げたばかり。こう度々見通しを改訂されてはたまったものではありません。ドル買いはしばらく打ち止めにするつもりでしたが、つい最近、米ドルを追加購入したところです。大手証券会社でドルを買い付ける場合、取引単位が10万米ドル未満だと適用為替スプレッドは50銭、10万米ドル以上になると25銭にディスカウントされるので、ドル円押し目を見計らって、ある程度まとまったロットで米ドルを買い付けた方がコストセーブに繋がります。急激に米長期金利が上昇したため、銘柄によってはheavy discountで既発債が購入できます。今月初旬受渡のゴールドマン・サックス・グループ発行、残存9年弱の既発債は85円前後で約定できました。実質利回りは4%を僅かに切れる水準、悪くないトレードでした。

日米金利差が拡大すれば、円安が進み、縮小すれば円高になります。2019年以降、新型コロナウイルス感染拡大を受けてFRBが利下げを行ったため、ドル安・円高になりましたが、今年になって米国では力強い景気回復が確認され、長短金利が共に大幅上昇しています。5月上旬、米長期金利は3.12%まで上昇、現状は2.90%前後で落ち着いていますが、いつ上振れしても可笑しくはありません。

私たちの年金の一部を運用している年金積立金運用独立行政法人(GPIF)は、「市場のクジラ」と呼ばれ、約200兆円を内外の株式・債券で運用しています。GPIFの2021年第三四半期の運用状況を見ると、約50%が外国債券・外国株式で運用されていることが分かります。当面、円金利の上昇が見込めない状況下、投資ポートフォリオの外貨建て比率を高め、米国債や高格付けのドル建て債券に投資をすべきだと考えています。トヨタをはじめ、主要上場企業の2023年3月末の想定為替レートは115円から120円のレンジにあります。かなり保守的な想定レートだけに、年央から輸出企業の業績上方修正に期待しています。