雪の妖精「シマエナガ」|小原玲さんの写真集から

スポーツジムのトレーニング・ルーティンは1時間の有酸素運動。その間、ランニングマシンのシートテレビが、退屈しのぎかつ貴重な情報源となります。いつものようにニュース番組を流していたら、見覚えのあるホテルが登場しました。京王プラザホテル札幌では、大人気の「シマエナガ」のコンセプトルームを設けたり、スイーツやグッズを販売して、集客に結びつけているのだそうです。キャッチコピーが揮っています。

〈プラザで”癒し”探してみませんか?〉

体長14㎝、体重8gの雪の妖精「シマエナガ」は、いつからこんな人気者になったのでしょうか。愛用の『決定版 日本の野鳥650』(平凡社)には、「エナガ」の亜種と淡白に紹介されているだけです。火付け役のひとり・小原玲(おはられい)さんの写真集を取り寄せてみると、奥付けには2016.11.1第一刷とあります。「シマエナガちゃん」と名付けられた写真集のサイズは15㎝×15㎝。宅配が届いた時、「なんて小ちゃい写真集なんだ」と少しガッカリしたのですが、よく考えてみれば、被写体「シマエナガ」とのバランスに配慮したのですよね。

北海道に生息する「シマエナガ」の体重は1円玉わずか8個分。「エナガ」と違って眉がなく、真ん丸の白い体に円らな瞳がちょこんとついているので、とても可愛らしく見えます。冬は主に樹液を舐めて暮らしているそうです。すばしっこく飛び回る上、生息域を脅かさないように又天敵に知らしめてもいけないので、撮影には細心の配慮が必要です。巣立ちの瞬間をはじめ超レアな写真の数々が撮れたのは、息を潜めて粘り強くシャッターチャンスを待った小原さんの「シマエナガ」愛の賜物なのでしょう。報道写真から動物写真への転身を決定づけたのは、アザラシの赤ちゃんとの出会いだったそうです。


(出典:the maebashi shimbun)

3年前、小原さんは60歳の若さで亡くなっています。「シマエナガ」のカット全てから、自然と謙虚に向き合い、被写体に温かい視線を注ぐ小原さんの人柄が偲ばれるようです。