公共図書館の図書資料購入ルール|新刊ベストセラー購入の是非

図書館で新刊ベストセラーを借りようとすると何百人待ちというケースがざらにあるようです。千人超えも珍しくないと聞きます。予約を入れたとして一体いつ借りられるのでしょうか?文庫や新書でも新刊なら1000円を超える時代ですから、極力、図書館を利用して出費を抑えたい気持ちはよく分かります。

8月28日付け朝日新聞が<蔵書購入ルールは必要?>と題して、公共図書館の実態を報じています。記事が取り上げたのは都内最多の16の図書館を擁する世田谷区のケース。人口約92万人に対して200万冊の図書資料があるそうです。吃驚仰天したのは、今年の本屋大賞受賞作「汝、星のごとく」を区全体で55冊も所蔵している点。同じ本を複数所蔵することを「複本」というのだそうです。8月27日時点で1884人の予約待ちが入っているにせよ、55冊はどうみても過剰な「複本」に映ります。出版から半年もすればブックオフの書棚に定価の7掛8掛で大量に並ぶ(賞味期限の短い)ベストセラーをかくも大量に購入しておきながら、「(55冊が適正か否かは)正直分からない」というのが図書館長の弁。

自民党議連が「蔵書が人気のある本に偏り、多様な世界に接する機会の減少につながっている」と指摘するのは誠に御尤もです。この20年で図書資料購入予算は3割減少し1館あたり平均840万円だそうです。こうした厳しい予算制約が課されているなら尚更、どんな図書資料を購入すべきなのか、使い途について熟慮が求められて然るべきです。

図書資料購入にあたって公共図書館に合理的な範囲で裁量権を認めることに反対はしませんが、特定の著者を利することになる「複本」については一定のルール(ポリシー)が必要だと思います。