日本近代文学館のカフェレストラン「BUNDAN」〜生誕110年太宰展とともに〜

先週末、日本近代文学館(目黒区駒場)で開催中の「生誕110年太宰治 創作の舞台裏」展を訪れました。界隈にはお気に入りの日本民藝館がありますから、駒場は決して疎遠な場所ではありません。ところが、ついでに立ち寄ればいいものの、日本近代文学館とはずいぶんご無沙汰でした。1967年竣工の日本近代文学館の第一印象は古びた所蔵庫、展覧会も地味で正直あまり惹かれなかったからです。今回、久しぶりに訪れてみて、そんな勝手な思い込みを大いに反省しました。太宰展は初日、若い人を多く見かけました。最近、発見されたという『お伽草紙』の完全原稿や『富嶽百景』冒頭の典拠資料(『富士山の自然界』)など、見所たっぷりでした。さすが、太宰研究第一人者安藤先生の編集だけあります。春陽堂書店刊行の図録の出来栄えも良かったので、帰り際に買い求めました。

驚いたのは、併設カフェレストラン「BUNDAN」(9:30〜16:30)が大賑わいだったこと。2012年に旧すみれ食堂の後釜に入ったのが、Coffee & Beer BUNDAN。天井にまで届く入口右手の書棚には、オーナー草彅洋平さんの蔵書約2万冊が収まっています。これだけなら、最近流行りのブックカフェと大して変わりませんが、メニューには様々な工夫が凝らされていて文学マニアのハートを鷲掴みにするのです。梶井基次郎の『檸檬』に因んだ檸檬パフェや文人御用達の銀座「カフェパウリスタ」で提供されていたブラジルコーヒーを再現したりと、作家や作品を連想させるメニューが目白押しです。坂口安吾好みの「焼鮭のサンドイッチ」なんて粋じゃありませんか。入口付近のショーケースには、川端康成愛用の原稿用紙や作家グッズが陳列販売されています。遊び心満載の「BUNDAN」の隠れ家っぽい雰囲気も魅力のひとつです。とにかく混み合いますが、天気のいい日はコーヒーをオーダーして、建物1階のテラスに移動して寛ぐ手もあります。唯一の難点は、活字文化の凋落のせいでしょうか、日本近代文学館は月曜日だけでなく、日曜日と第4木曜日も休館だということ。お出かけの節は、休館日に要注意です。