20階建て以上の鉄筋コンクリート造りの集合住宅が、巷間、タワーマンションと呼ばれます。我が家は因みに一戸建て、ポジショントークだと思われたくありませんので、あらかじめ断っておきます。タワマン開発に携わるゼネコン社員が「タワマンには住みたくない」と断言するのだそうです。タワマン乱立のきっかけは2002年の「都市再生特別措置法」制定に溯ります。同法には、高層ビルが建てやすくなるよう容積率の緩和が盛り込まれました。通称タワマン買うべからず、その論拠について徹底検証してみようと思います。
昨年10月、東日本を直撃した台風の影響で、ここ数年<住みたい街ランキング>上位にランクインしていた武蔵小杉のタワマンが浸水・停電被害に遭い、資産価値の暴落が盛んに喧伝されました。武蔵小杉にかぎらず、タワマン購入者のなかに、後悔派がじわりと増えているのは間違いではなさそうです。タワマンのデメリットについて、お浚いしておきましょう。
(日常生活の不便)
・朝のラッシュ時にはエレベーターが混雑、駅近でも+5分前後かかります。
・新聞・郵便物は1階まで取りに行かなければなりません。
・宅配便が届くのに5〜10分、待たされることもあります。
・方角にも依りますが、南向きは夏猛烈に暑いそうです(空調は効かないのかも?)。
・平置きでない立体駐車場の場合、出庫に時間がかかります。
(建物の耐用年数と固定資産税負担)
木造戸建ては22年、RCは47年。マンションの場合、敷地面積を戸数で割ったものが土地の区分所有分となります。概ね、土地部分と建物部分の比率は、マンションの場合3:7、戸建ての場合は7:3と逆転します。従って、減価償却期間の長いマンションの方が、固定資産税負担が長く続くことになります。仮にマンションと戸建ての購入価額が同じであれば、一般論として、戸建ての方が固定資産税負担は少なくなります。
(修繕積立金不足と30年後の高速エレベーターの交換)
マンションは10~15年ごとに大規模な修繕工事が必要になります。シーリング材というゴム状の接着剤の耐久年数は15年、劣化すると雨漏りの原因になります。ほかにも、外壁の補修、屋上防水シートの張り替え、エレベーターの設備点検、機械式駐車場の補修と修繕工事は多岐に渡ります。タワマンの場合、こうした修繕工事の費用は低層マンションの2倍以上かかると言われています。何故なら、タワマンでは高層のため補修のための足場を組むことができないからです。そのため、屋上からゴンドラを吊り下げて補修工事や清掃を行います。風が強い日はゴンドラでの作業が中止されますから、その分工期が伸びてコストが増大します。
高層階まで短時間でタワマン住民を運ぶエレベーターの耐用年数は約30年。従って、30年単位で交換が必要だそうです。2度目の大規模修繕を迎えるとき、エレベーター1基あたり1億円前後の費用が掛かります。販売時に設定された修繕積立金は購入者の初期負担を考慮して、低めに設定されていますので、タワマンの修繕積立金は恒常的に積立不足だと認識しておくべきです。言い換えれば、後から持ち出すランニングコストに相当する費用が予想以上に大きいということです。人手不足で将来人件費が高騰すれば、足元の修繕費が5〜10倍になっても不思議ではありません。
(タワマンの不都合な真実〜未来の廃墟化リスク〜)
4/18付朝日新聞朝刊に掲載された真山仁さんのPerspectives:視線の記事に触発されて、今回のブログ記事を書き進めてきました。前回の東京オリンピック以降、三大都市圏で雨後の筍の如く誕生した「ニュータウン」が、今や孤独な高齢者が取り残されスラム化しています。建て替えは殆ど不可能だと言われています。「ニュータウン」で起きているこの深刻な問題は、いずれ、タワマンが抱える問題でもあります。投資目的での購入者が多いのも気懸りです。理事会が機能しているのは全体の2割程度だそうです。ゼネコン社員はこう呟きます。
「日本では前代未聞の建築で、何が起きるか想定不能。災害時も心配だし、しっかりと修繕積立金を集めないと、資産価値も暴落する」
マンション診断士の安山泰民さんはこう言います。
「不動産業界の人間は知っています。タワーマンションは買ってはいけない。売っているマンションデベロッパーの営業マンですら知っている事実です。後がどうなるか分からない。絶対後悔する。」
都心のタワマンがスラム化した首都東京の風景を想像すると身の毛がよだちます。タワマンは経年劣化するにつれ、手放す人が増えていきます。タワマンをジョーカーとすれば、究極のババ抜きゲームがこれから始まるのでしょう。