映画「パール・ハーバー」(2001年)唯一の見所ドーリットル空襲

太平洋戦争の口火を切った真珠湾奇襲攻撃を題材にした2001年制作の映画「パール・ハーバー」を、最近、WOWOWで視聴しました。真珠湾奇襲攻撃といえば、1970年に公開された日米合作の「トラ・トラ・トラ!」。中高時代に繰り返し観た「トラ・トラ・トラ!」のイメージを抱いて「パール・ハーバー」を観たところ、ひっくり返りそうになりました。リアリティ重視の戦争映画というよりも薄っぺらい恋愛映画そのものだったからです。予備知識なく旧作を観ると、えてしてこうした失敗を犯すものです。真珠湾を舞台にしなければならない必然性も感じられませんでした。上映時間は堂々の3時間超(183分)・・・2001年のゴールデンラズベリー賞ラジー賞とも称されアカデミー賞授賞式前夜に表彰される最低映画賞)にノミネートされたといいますから、ある意味、納得です。

史実との乖離が大きすぎて、良質の戦争映画を期待して劇場に足を運んだ観客をがっかりさせたことは疑いありません。映画タイトル「パール・ハーバー」はまさに看板倒れと言えましょう。全般的に奇異に映ったのは日本軍に関する描写でした。極秘裏に進められた真珠湾奇襲作戦会議が屋外で行われたり、圧倒的な運動性能を誇るゼロ戦に挑んだP40が空中戦で勝利したり・・・・という具合に随所に粗が目立ちます。

結末もよくあるパターンでサプライズはありません・・・見所を指摘するのが難しい駄作映画ですが、間延びしかかった後半にドーリットル空襲を持ってきたことでかろうじて映画の存在意義が保たれたように思います。戦後74年目を迎えた今、真珠湾開戦からわずか4か月後にアメリカ軍が日本本土空襲(東京・横浜など)を強行した事実はあまり知られていないのではないでしょうか。爆撃隊を指揮したジミー・ドーリットル中佐に因んで、この空襲はドーリットル空襲と呼ばれています。空母「ホーネット」から飛び立ったB-25双発爆撃機16機が太平洋戦争初の本土空襲を敢行、片道切符で母艦に戻らず中国大陸に不時着、搭乗員はパラシュート脱出するという決死の作戦でした。搭乗員のうち8名が日本軍に捕まり、3名が処刑されています。映画では、滑走路の短い空母から重量級の爆撃機を発艦させるため、可能なかぎり装備を減らし、果ては詰め込む燃料さえ制約する様子が具に描写描されています。戦闘機パイロットの主人公レイフとその親友ダニーが爆撃機を訓練抜きで操縦することは非現実的なことだと承知の上で、この辺りの描写は評価に値します。

アメリカ合衆国が美しい景観で知られるオアフ島に騙し討ち(treacherous attack)同然の奇襲をかけられ、太平洋艦隊の主力戦艦を喪失したことをどれほど恨みに思ったことか。リメンバー・パール・ハーバーというスローガンを合衆国全国民に植え付けてしまったことは、日本にとって、最大の誤算だったのです。映画では実際に真珠湾攻撃に参加していない山本五十六が洋上の空母甲板にいて、「眠れる巨人を起こしてしまった」と嘆くわけですが、本土空襲による物的精神的ダメージを最も懸念していたのは他ならぬ山本五十六でした。ドーリットル空襲が、挽回不能な大敗北を喫することになるミッドウェー作戦へと駆り立てることになるのです。