NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』第17回に滂沱の泪~祖母ひさ・母小しず死す~

11月1日からスタートしたNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』は、三世代の女性たちが紡ぐ100年のファミリーストーリー。子役で始まりほどなくヒロインがバトンを受け継ぐこれまでの物語とは異なる筋立てだけに、これからの展開が楽しみでなりません。NHKプラスの見逃し配信のお蔭でリアルタイム視聴並みにフォローしています。その傍らにはいつもラジオ英語講座があったという設定にも興味津々です。

第4週「1943-1945」第17回はあまりにも悲痛な内容で涙が止まりませんでした。生まれたばかりの娘を連れて実家に戻ったヒロイン安子(上白石萌音)は、母・小しず(西田尚美)と祖母・ひさ(鷲尾真知子)と久しぶりの再会を果たします。それからまもなく、家族が住む岡山にもB29が襲来、街は焦土と化してしまいます。安子の父・金太(甲本雅裕)がひさと小しずを避難させた防空壕があろうことか焼夷弾<注>で焼かれ、ふたりは命を落とします。

焼け跡にひとり呆然と座り込む金太を演じた甲本雅裕さんの迫真の演技に胸が締めつけらました。映画やドラマでB29による本土空襲のシーンを見るたびに重苦しい思いに囚われます。平和な時代を生きる私たちは、繰り返し繰り返しこうした場面を見ることでしか、哀しい哉浅薄な想像力を補うことができません。

1945年3月10日の「東京大空襲」の死者は10万人超、罹災者は100万人超えです。とうに制空権を米軍に奪われた帝都東京は、1944年11月24日から終戦までに106回も空襲を受けています。「東京大空襲」は終戦のわずか5ヶ月余り前の出来事です。第17回を見てやり切れないのは、視聴者が終戦まであと数ヶ月だと知っているからです。第18回の今日は玉音放送が流れ戦争は終結します。しばらくして軍事機密扱いだった天気予報も再開します。歴史に「たられば」はありませんが、政府や軍部があと半年終戦を早めてくれていたらと常に思考はそこで停止してしまいます。ヒロシマとやナガサキに原爆も投下されずに済んだのです。その間だけでも喪われずに済んだ命の数を想像すると、悔やんでも悔やみきれません。

<注>焼夷弾(M69)の大きさと重さ・・・直径7.6センチ・全長51センチ・重量2.7kg