深大寺はすっかり晩秋の装い~205年ぶりに公開された元三大師胎内仏「鬼大師」像を拝む~

毎年、初詣は地元の八幡様と調布・深大寺を訪れることにしています。初詣で授与された御祈禱札やお神札は玄関口に近いニッチェに飾っています(写真下)。今年は地元の八幡様がコロナ禍を理由に破魔矢やお札の授与を取り止めたため、お神札は映画『君の名は。』のラストシーンの舞台になって一躍有名になった須賀神社で授与されたものです。深大寺の御祈禱札の上部には「角大師(つのだいし)」が描かれています。昨年、鬼を退治する劇場版「鬼滅の刃 無限列車編」が大ヒットしましたが、鬼(夜叉)の姿となって逆に疫病神を退散させたのは天台宗中興の祖第十八代座主の良源です。れっきとした実在の高僧で命日が正月3日だったことから、朝廷からの諡名「慈恵」より「元三大師(がんざんだいし)」の通称で親しまれています。

深大寺は、天台宗別格本山で都内では浅草寺に次ぐ寺歴を有する古刹(創建は733年)です。山号は「浮岳山」。寺内で最も古い建造物・茅葺の山門の歴史は元禄八年(1695年)に遡ります。寺格はもとより、武蔵野の樹々に囲まれた豊かな自然環境や国分寺崖線が形成する周辺の段丘崖、情緒あふれる門前町深大寺の大きな魅力になっています。隣接する広大な都立神代植物公園は旧寺領、外国人に人気のある都心の浅草寺より深大寺の方が遥かに見どころが多く訪れる価値大だと個人的には思っています。

その深大寺で205年ぶり(文化13|1816年以来)に元三大師の胎内仏「鬼大師」像が特別公開されました(~11/23まで)。10/12からトーハクで始まった「最澄天台宗のすべて」展に秘仏「元三大師」像が出開帳(でがいちょう)されたことを記念しての特別公開です。昨年の大みそかNHKゆく年くる年」でも「元三大師」さまのご尊顔が映ったので記憶されている方も多いかと思います。その胎内に15センチほどの木造「鬼大師」像が安置されていたとはまったくの初耳、公開終了日の迫る週末の土曜日、深大寺に駆けつけました。お正月のお御籤の行列に匹敵するくらい、大勢の参拝者が行列待ちをしていました。1時間弱で受付け(拝観料500円)を済ませ釈迦堂に入場、思ったより間近で角のある可愛らしいお大師様との対面が叶いました。

元三大師の化身「角大師」あるところに、病魔や悪魔は寄りつかず、切の災厄から逃れることができると言われます。良源さんには「角大師」のほかに、「豆大師」や「降魔(鬼)大師」の異名があります(写真下は比叡山延暦寺元三大師堂の護符です)。「角大師」や「降魔(ごうま)大師」のお札は最強の疫神病除カードではないでしょうか。その「降魔大師」を象った秘仏の威力たるやあな畏るべしです。

特別公開にあわせ頒布された特別御朱印(「豆大師」クリアファイル付き別紙)を有り難く頂戴して、深大寺を後にしました。初詣のときには気づなかった駐車場のイチョウ並木や境内の無患子の巨木が鮮やかに黄葉していました。深大寺はすっかり晩秋の装い、「鬼大師」さまのお導きで深大寺の新たな魅力を発見できました。