米国から届いたバンクシーの切手

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻開始から1年目にあたる今年2月24日、ウクライナバンクシーのグラフィティをモチーフにした切手が発売されました。気がついたときには完売だったので、後日、ebayで見つけて落札しました。売主から届いた封筒(下)には、色とりどりの切手が所狭しと貼られています(宛名はバンクシーの切手シートで隠してあります)。

差出人は米国・サウスブリッジ(マサチューセッツ州)に住む女性でした。Hallihanはアイルランド系に多い苗字ですから、ご先祖はアイルランドからの移民ではないでしょうか。メルカリの匿名配送からは決して窺えない差出人の氏素性を勝手に想像してみました。ラファエロの「システィーナの聖母」に描かれた天使の切手が4枚、アフリカ系女性パイロットのベッシ―・コールマンやニクソン大統領に、マリリンモンローの切手が貼付されています。差出人はアートに造詣の深い筋金入りの切手コレクターで、ウクライナで発売されたバンクシーの切手も真っ先に入手したのでしょう。買主の日本人も切手好きだろうと察して、サービス精神を発揮してくれたに違いありません。


NHK

切手(写真・下)に描かれているのは、首都キーウ近郊ボロジャンカの壁にバンクシーが残した作品(上)です。少年が一本背負いで黒帯の大人を投げ飛ばした瞬間が描かれています。少年と黒帯の男性は、それぞれウクライナとロシア大統領プーチンを表しています。切手左下には「出て行けプーチン」という言葉が刻まれています。

プーチン大統領が2000年に来日し講道館で10歳の少女と乱取りした際、黒帯・有段者のプーチン大統領が「投げ飛ばしてごらん」と声を掛け、これに応えた少女は見事な一本背負いを決めました。独裁者にして怖面のプーチンが投げ飛ばされる映像は世界に配信されたため、当時は無名のバンクシーもきっと見て記憶に留めていたのでしょう。プーチン大統領の背後には、森喜朗首相(当時)や山下泰裕・現JOC会長の姿が見えます。パンデミックの最中、カネと利権塗れの東京五輪を強行した彼らとプーチンは同根です。プーチン大統領はスポーツを巧みに政治利用しようとします。講道館でにこやかにそのパフォーマンスを讃えた日本の政治家も同罪です。フェアプレー精神を旨とするスポーツに名を借りて欺瞞に満ちた偽善を装うプーチン大統領を、バンクシーは公然と告発しているのです。

絵が描かれた場所は遊具のある幼稚園の遊び場でした。そこで子供たちの命が奪われています。バンクシーは無償でウクライナの郵便局に絵を提供し、切手の売り上げは学校の防空壕建設資金に充当されたそうです。切手の送り主からは売上をウクライナに寄付するとメッセージが届きました。