見逃した「ヨシタケシンスケ展かもしれない」展のリベンジ|宇都宮美術館を訪れる(前篇)

昨年前半、世田谷文学館で開催された「ヨシタケシンスケ展かもしれない」展(22/4/9~7/3)を見逃してしまいました。ビジネスダイアリーの隅っこに展覧会や舞台のスケジュールを書き留めておくことにしているのですが、忙しさに紛れて見逃してしまうことが度々あります。普段なら後悔先に立たずで諦めるしかありませんが、この展覧会が全国を巡回していることに気づきました。東京を皮切りに、市立伊丹ミュージアム(兵庫)→ひろしま美術館(広島県)→松坂屋美術館(愛知県)→倉吉博物館(鳥取県)→福岡市科学館(福岡県)→新潟県万代島美術館(新潟県)と日本列島を縦断し、再び関東圏に舞い戻ってきたのです。会場が宇都宮美術館なら東京から日帰り可能です。そんなわけで、今週末リベンジを果たしました。来年は静岡会場や長野会場でも開催されるそうです。足掛け3年の巡回展、しかも分かっているだけで全国10ヵ所で開催なんて聞いたことがありません。絵本作家ヨシタケシンスケさんの人気ぶりを裏付ける盛況ぶりです。

週末や祝日のハイタイムは予約が一杯で希望日は15:30の枠しか空いていませんでした。宇都宮美術館を訪れるのは初めてです。設計者は、代表作のひとつ、皇居に面した最高裁判所庁舎(1974)で知られる岡田新一(1928-2014)。最高裁判所の権威を象徴するかの如く、花崗岩・稲田石(茨城県笠間市)を大量に使用した重厚な外観はまるで周囲を睥睨しているようです。調べてみると、鹿島建設を経て独立した岡田新一は、同庁舎以外にも警視庁本部庁舎をはじめ、図書館、美術館、病院、学校など幅広い公共建築を手掛けています。

宇都宮市街からの交通アクセスが不便なことと引き換えに、郊外の広々とした丘陵地に立地を求めた宇都宮美術館は、緑豊かな自然の懐に抱かれた最高の環境を手に入れています。広々とした駐車スペースから緩やかな坂道・「花の路」を上った先に宇都宮美術館があります。上質の野外彫刻3点が出迎えてくれます。メイン園路「花の路」右手遠方にバリー・フラナガンの《ホスピタリティ》(1990)が鎮座し、園路を進んだ左手にサンドロ・キアの《ハートを抱く片翼の天使》(1996)があります。美術館の中庭にはクレス・オルデンバーグ の名作《中身に支えられたチューブ》 (1985)が設置され、美術館内部から借景として楽しめます。地元名産・大谷石で仕切られた通路の窓から見る景色は格別です。駐車場と美術館のエントランスが直結していないことで、アプローチする歓びが生まれます。

早めに現地に到着したので、ミュージアムショップで図録やグッズを買い求め、空いた時間は8010cafeで寛ぎました。展覧会を観る前からワクワクさせてくれる美術館は決して多くありません。展覧会を1年以上待った甲斐があったというものです。