ispace(9348)はテンバガー銘柄の有望候補?

世界が注目したispace社のランダ―による月面着陸は失敗に終わりました。成功すれば民間企業初の月着陸となるはずでした。先月26日の深夜、ネット中継を通して、ランダ―が速度を制御しながらゆっくりと月面に近づく様子を食い入るように見つめていました。着陸延期の可能性もあったにもかかわらず、ほぼ予定どおりのスケジュールで進行していたので、着陸の成功はほぼ確実と思われました。

ところが、着陸寸前の時間帯に突然映像が途切れ、予定時刻の午前1時40分を過ぎても着陸したことを知らせるデータが届かないことが明らかにされます。その後のデータ解析によって、減速に使う燃料の推定残量がなくなり降下速度が上昇し、ランダ―が月面に衝突し通信が途絶したことが分かりました。事前に制作された、中継画像と見紛うような美しいグラフィックには不測の事態が一切反映されていないため、狐につままれたような気分でした。

NASAの月探査機が撮影した画像(下)にはispace社の月着陸船の破片と思しきモノが散らばっています。着陸予定地点まで近づけた確かな証拠ですから、袴田武史代表が言うとおり、着陸寸前までデータが取得できたことは大きな成果だったのでしょう。これまで月面着陸に成功したのは、米国、旧ソ連、そして中国だけです。アームストロング船長が人類で初めて月面に降り立ったのは1969年7月21日のことです。有名な”That's one small step for a man, one giant leap for mankind"は、月面に左足を下ろしたときに発せられた言葉です。

3月にJAXAが打ち上げた次世代ロケットH3初号機は、第2弾エンジンが着火せず、指令破壊されています。対して、半世紀以上も前に人類を月に送り込んだ米国の恐るべき科学技術力には、唯々、畏敬の念を抱くしかありません。

着陸失敗直後のispace社の株価は前日の終値1990円からS安の1590円まで急落しました。5月12日には上場後最安値の793円まで下落しましたが、直近は1000円台を回復し続伸しています(写真・下は直近株価チャート)。セカンダリーで参戦した投資家も概ねハッピーだったのではないでしょうか。異例のダウンラウンドIPO(公開価格:254円)だったispaceのホールダーは、易々と公開利益を掌中にできたはずです。かくいう自分もテンバガーまであと一歩と迫ったispace社のホールダーのひとりとして、世紀のイベントを楽しめただけでなく、予想以上のキャピタルゲインを得ることができました。

ispace社の24年3月期連結最終損益は78億円の赤字です。資金調達に一定のめどをつけているため、24年度以降も月をめざす計画に変更はないようです。世界的に豊富な資源を有する月探査への関心は高まっています。民間初の月着陸の誉れはお預けになりましたが、テンバガーの有力候補・ispace社に引き続き注目していこうと思っています。