ゆうちょ銀行超弩級POは「パンドラの箱」

2月27日にゆうちょ銀行(7182)が巨額の株式売出しを発表しました。日本郵政が売出人で、国内外で9.7億株の売出し及び最大1.1億株のオーバーアロットメントを実施します。金額にして1兆2千億円に達する途轍もない売出し規模ですから、市場の関心を一手に引き受けています。主幹事は大和証券野村證券ゴールドマン・サックス証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券及びみずほ証券です。普段はだんまりの大手証券会社もこれだけの規模を捌くには形振り構っていられないようです。これらの証券会社に口座がある方なら幾度となく電話勧誘を受けているに違いありません。売出価格は最速で3月13日(月)に決まります。

これほどの規模ともなれば、通常、PO発表の翌日から株価はだだ下がりになるはずです。ところが、ゆうちょ銀行(7182)の株価はPO発表日の終値1156円から1週間足らずで5%強も上昇しています。28日から信用取引に関する規制銘柄に指定されて、信用新規売建てができなくなったからです。

ディスカウント率は2~4%ですが、2%で決まるでしょう。売り禁の影響で13日まで株価が下がらなければ、PO後の需給が著しく悪化するにも拘わらず、投資家は高値でゆうちょ銀行株を掴まされることになります。受渡日が3月の権利付き最終日以前なので、4%を超える配当取りが狙えると考えるのは早計の極みです。どうしても欲しければ、配当落ち後にもっと安値で拾えるはずです。

今回のPOの懸念材料はいくつもあります。以下、列挙しておきます。

1)日本郵政は出資比率50%をめざして2025年にさらに10%前後の売り出しを予定している点

2)中間配当もないため3月の権利落ちが予想配当額(50円)を大きく超える可能性が高い点

3) 年間配当50円が定着しておりさらなる株主還元が期待できない点(株主優待の3000円カタログギフトは受け取れない海外投資家には不評でしょう)

4)2024年度の業績見通しが芳しくない点

グループ3社上場時(2015年11月)のゆうちょ銀行の公募価格は1450円でした。今回、当時売りそびれた保有株をすべて1230円で売却しました。単位株ベースで計算してみると、その間に受け取った累積配当額は325円X100株=32500円(源泉後25897円)ですから、22000円の売却損を7年余りの累積配当でかろうじて賄った恰好です。グループ3社のIPOの際、証券会社がこぞって薦めた長期保有は完全なミスリードだったわけです。

今回の超弩級POは「パンドラの箱」だと思っておいた方が賢明です。手出し無用、触らぬ神に祟りなしです!