2022年8月末で見納め|チームラボボーダレス(お台場)

チームラボのアート作品を初めて目にした場所は下鴨神社でした。2018年8月のことです。古都・京都にあって世界遺産に指定される由緒ある神社で最先端のアート作品が披露されるとあって、オープニングセレモニーには京都市長下鴨神社権宮司をはじめ豪華な来賓が駆けつけ話題になりました。鎮守の森・糺の森には「立ち続けるものたち」と名付けられた大小さまざまな球体が配置され、大きく深呼吸するかのようにカラフルな光が明滅していました。思いもよらない異色のコラボを実現させた京都人の懐の深さとチームラボ代表猪子寿之さんの大胆な着想に唯々驚いた記憶があります。

この年6月、チームラボはお台場に<チームラボボーダレス>という名のデジタルアートミュージアムをオープンさせます。初年度の年間来館者数は約230万人、単独アーティストのミュージアムとして世界最多記録だったそうです。翌2019年には世界の優れた文化的施設に贈られるティア・アワードを受賞。過去、国内で受賞したのは東京ディズニーシーとユニバーサルスタジオ・ジャパンだけですから、それだけでもとてつもない快挙だと分かります。オバマ大統領やブラピをはじめ世界中のセレブを虜にしたわけですから、コロナ禍さえなければ、東京オリンピック前後に世界中から集客し、来館者数をはじめ各種記録ずくめの偉業達成となったことでしょう。

<チームラボボーダレス>は来月31日で閉館することになっています。2023年に都心部で新たな<チームラボボーダレス>を立ち上げるのだそうです。先々月、見納めにお台場に足を運びました。写真を何枚かアップしておきましたが、体感型ミュージアムですから、真価は現地へ行って確かめるしかありません。数日前、猪子代表が林修さんとの対談番組で核心を突く発言をなさっていました。都市生活者は、平面的に生きているため、森のような複雑な空間を立体的に捉える能力を欠いているのだと。身体を通して世界を認識することが大切だと力説されておられました。ネズミを使った実験によれば、複雑で立体的空間で育ったネズミの神経細胞は、平面で育ったそれより4万個多く、脳の体積は15%増しになるそうです。言い換えれば、幼少期から自然に親しんで身体を通して世界を認識するようになれば、子供たちは頭でっかちな大人にならずに済むというわけです。人間は、いつの間にか自然界を勝手に線引きして世界を矮小化しがちです。地球と宇宙は繋がっています。山も平野も地続きです。猪子代表が言うボーダレス=境界のない世界とは、私たちが無意識のうちに視界から遠ざけて見ることを諦めている世界のことなのです。私たちは目の前で見ているものだけを世界だと思っているに過ぎません。

他人の評価を気にせず、<自分が意味があると思うことを追求してきたからこそ、これまで続けて来られた>と猪子代表は言います。<同質のチームは行き詰る、異質なチームだからこそ最高のパフォーマンスを引き出せる>、その通りだと思います。大学を卒業してベルトコンベアに乗る人生ほどつまらないものはありません。(東大卒の)異端児(Maverick)は彼にとって最高の褒め言葉ではないでしょうか。