見逃した「ヨシタケシンスケ展かもしれない」展のリベンジ|宇都宮美術館を訪れる(後篇)

親子連れに混じってカップルや20代30代の来館者も目立ちました。開放感たっぷりのホールで出迎えてくれたのは「あいつ」の等身大のぬいぐるみです。そこを起点にふたつの展示室を見て回ります。展示室のあちこちに置かれたお茶目なポップが目を惹きます。ポップを道標にするのも一計です。入口から順番に見て回らなくても、気に入ったスポットに自由に移動できるのです。額縁の鏡の前に立つと出世作『りんごかもしれない』の如、頭や顔にりんごらしき物体が次々と現れます。こうした参加体験型展示がヨシタケシンスケ展の醍醐味のひとつです(大人が子どもを押しのけて熱中しないように)。

圧巻は数え切れないスケッチメモ、謂わばヨシタケシンスケさんの創作ネタ帳です。絵本の卵と言ってもいいでしょう。手帳サイズのメモには、大人もハマるヨシタケシンスケさんの絵本のアイディアの原石が散りばめられていました。原画は絵本サイズのひとまわりもふたまわりも小さいそうです。マイクロサイズのスケッチメモを一枚一枚見ていたら時間がいくらあっても足りません。スマホの画像を幾つかご紹介しておきます。

段ボールで作った鳥の立体作品を身に纏い移動するヨシタケシンスケさん(当時学生)の動画に破顔一笑してしまいました。隅に移動して羽を畳めばプライベートな秘密基地の出来上がりです。自由奔放な発想の萌芽はこの時期に養われたのでしょうか。ヨシタケシンスケさんは現在50歳。絵本作家デビューは10年前の2013年ですから、遅咲きの部類です。第2会場の後半にヨシタケシンスケさんの人生双六ポップが陳列してあります。悩みながら少しずつ夢に近づいていったヨシタケシンスケさんの本音が見え隠れするようです。出口手前でイラスト入り来場者限定カードを受け取ったらお終いです。ミュージアムグッズ売り場は大賑わい。赤い図録(写真・下)の装丁が素敵だなと思ったら、「第56回増本装幀コンクール」日本書籍出版協会理事長賞を受賞していました。売り切れてなくてめでたし。

帰宅後、最新刊『メメンとモリ』のたっぷり残された余白を眺めながら、ヨシタケシンスケさんとの空想会話を愉しんでいるところです。