開館したばかりの「魔法の文学館」を訪ねて

11月3日にオープンしたばかりの「魔法の文学館」(江戸川区)を訪れました。開館直後とあって、開館月の週末はすべて満席。抽選と先着順を組み合わせた分かりにくい予約方式に戸惑いながら、平日枠を何とか押さえました。最寄駅は東京メトロ東西線葛西駅、そこから都営バスで約10分です。乗り換えが面倒なので同伴者の学芸員YMさんをピックアップしてクルマで向かったのですが、朝方の自然渋滞+事故渋滞に巻き込まれ、現地まで2時間を要しました。煩わしくても公共交通機関を利用すべきでした。

所在地の江戸川区の平均海抜は5m。その7割は海抜0m地区です。「魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)」のあるなぎさ公園の展望の丘は、江戸川区で最も海抜の高い地点(13.5m)です。東側を流れるのが旧江戸川です。館長の角野栄子さんは大層この場所を気に入ったそうです。お隣には「なぎさポニーランド」があって、乗馬を楽しむ子どもたちで賑わっていました。新緑の頃はさぞ美しい光景が広がるのでしょう。

根津美術館静嘉堂文庫美術館をはじめ、由緒正しき都内の美術館は大抵傾斜地に建っています。「魔法の文学館」も丘陵地を巧みに活かした設えです。設計は隈研吾自治体は挙ってブランド好きとお見受けします・・・)。外観は白を基調とし、内装は明るいピンク(いちご色)で統一しています。受付の右手から大階段を設け、1階2階部分のオープンエリアを図書室にしています。モチーフはずばり『魔女の宅急便』の主人公キキが住む「コリコの街」。子どもたちに自由に本を探す歓びを味わって貰おうと、あえて絵本や児童書を著者やジャンルで分類していないのだそうです。広く切り取られた開口部から明るい日差しが注ぐ理想的な読書環境を作り上げています。折り畳み式のピンクの本棚は三角屋根で高さがまちまちなので、就学前の小さなお子さんはヨーロッパの街並みを歩いているような錯覚に囚われるのかも知れません。

2階の「栄子さんのアトリエ」は謂わば角野さんの書斎。書棚やショートフィルムは大人向けの展示です。

大階段を上り詰めた先におしゃれなカフェ「カフェ・キキ」が併設され、観覧後は居心地のいいカフェ空間ですっかり寛がせて貰いました。角野作品に因んだメニューも提供されています。角野栄子の作品に親しんだ方はぜひ訪れてみて下さい。