ビブリオバトル観戦記@武蔵野プレイス

昨日は、ひょんなことから近所のお気に入り図書館でビブリオバトルが開催されることを知って、15時から観戦目的で武蔵野プレイスを訪れました。巷で話題になっているのは承知していましたが、実際に観戦するのは初めてでした。

ビブリオバトルは「知的書評合戦」のことです。2011年に公式ルールが定められたそうですから、歴史はまだ浅いといっていいでしょう。普及員の五十嵐さんからは、<本と人を繋ぐ書評コミュニケーションゲーム>という補足説明がありました。

ルールは至ってシンプル。5名の発表者が次々と登壇して、5分という短い持ち時間で自分が面白いと感じた本を紹介します。それぞれ2分間の質疑応答タイムを経て、最後に観戦者全員(発表者を含む)で投票を行いその日のチャンプを決定します。

第1ゲームでチャンプ本に選ばれたのは『離島の本屋』(朴順梨著)。チャンプ発表者は常連と思しき女性でした。自分は別の本に一票を投じましたが、予想どおりこの本がダントツの1 位でした。楽し気に本の中身を語る発表者の姿勢が他者を圧倒したように思います。

第2ゲームのチャンプは、『チンチン電車と女学生』(堀川惠子・小笠原信之共/講談社文庫)を紹介した常連バトラーの男性。当日(8月22日)は奇しくもチンチン電車の日(知りませんでした)、本のタイトルに絡めた「今日は何の日かご存知ですか」というオープニングトークはお見事でした。掴みの巧さで観戦者の関心を一気に引き寄せた格好です。本の舞台は戦時下の広島、徴兵で男子従業員が枯渇するなか、女子学生が路面電車の乗務員を務めるというお話・・・そして運命の昭和20年8月6日がやってきます。発表者の誕生日も8月6日、原爆投下の日を毎年厳粛な気持ちで迎えるという率直な語りでチャンプの座は不動のモノとなりました。

閉会の挨拶に段になって、計10名の発表者に主催者武蔵野プレイス職員3名が紛れ込んでいたことが判明。館長まで駆り出されていたことが分かり吃驚。当初、青少年向けに企画したものの、初めての試みだけに青少年の動員叶わず苦肉の策となったようです。

ところが、会場は立ち見も出る大盛況。イベントは成功裏に幕を閉じました。終戦から70年、節目の8月に4名が戦争に纏わる本を取り上げたことにささやかな歓びを感じました。戦争を知らない働き盛りの若者がしっかりと記憶の風化を封印してくれたように思います。そしてなにより、武蔵野プレイス職員の献身的な奮闘は強く印象に残りました。2回目の企画を強く希望します。

閉会後、武蔵境北口の居酒屋に会場を移して懇親会。衰退著しい出版業界を憂えるひとりとして、熱っぽくビブリオバトルの面白さを語る常連参加者の輝く瞳に一筋の光明を見た思いです。

ビブリオバトル ハンドブック

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