『おじさんのかさ』の作者佐野洋子さん逝く

絵本作家の佐野洋子さんが他界されました。佐野さんの代表作と云えば77年に刊行された『100万回生きたねこ』が真っ先に頭に浮かぶわけですが、一番好きな彼女の作品を挙げよと問われれば躊躇なく『おじさんのかさ』(74年銀河社版ではさのようこ)と答えます。おじさん自慢の傘が雨の日に広げられることはありません。絶対に雨に濡らしたくはない大切な傘だからです。雨が降ったら傘を脇に抱えて雨宿り、男の子が「入れてよ」と頼んでもおじさんは知らんぷり。ある雨の日のことです、公園から子どもたちの歌が聞こえてきます。「あめがふったら ポンポロロン、あめがふったらピッチャンチャン」、おじさんは魅惑的な雨の音に抗しきれずとうとう傘を広げることになります。そしておじさんはこうつぶやきます<ぐっしょり ぬれたかさも いいもんだなあ。だいいち かさらしいじゃないか。>。大切なものに対する真の愛着とは何かを教わった絵本でした。佐野さんのご冥福を衷心よりお祈りします。

おじさんのかさ (講談社の創作絵本)

おじさんのかさ (講談社の創作絵本)