庄司薫が新潮文庫の<あとがき>に登場

書店に平積みされた新刊文庫のなかに庄司薫の『ぼくの大好きな青髭』を発見、しかも収録されていたのはロングセラーの中公文庫ではなく新潮文庫。帯には庄司薫<あわや半世紀のあとがき>とあるではありませんか、失礼を承知で申し上げれば、ご健在であられることに心底吃驚しました。1977年に「青髭」を発表後沈黙したっきり45年が経とうとしています。確かにあわや半世紀です。その間、配偶者(表舞台に薫氏が登場しないので仮面夫婦と疑いたくもなります-敢えてそう呼びます)の中村紘子さんはピアニストとして演奏会を重ねる一方、『チャイコフスキー・コンクール』を著し大宅壮一ノンフィクション賞を受賞するなどマルチタレントぶりを発揮。一体旦那はどうしてるんだろうかとずっと不思議に思っておりました。中村紘子さんの洒脱なエッセイは実は薫氏が書いているのではと邪推したくもなるというものです。

庄司薫の四部作新潮文庫版は5月発売の「青髭」ですべて出揃ったことになります。「青鬚」の<あわや半世紀のあとがき>では、薫氏は小説にも登場した銀座の旭屋書店や近藤書店(こちらは健在で閉店したのは3階の洋書専門店イエナのこと)が閉店して今は存在しないことを惜しんでおられました。携帯電話の普及で本屋さんの一角でドキドキしながら恋人と待ち合わせをするなんてシーンは金輪際小説には登場することはないのでしょう。

四部作の解説には政治学者の御厨貴さんや柴門ふみさんも登場します。新潮文庫の発売に触発されたわけではありませんが、四部作を読み直して古き良き時代を思い出してみようかと思います。

ぼくの大好きな青髭 (新潮文庫)

ぼくの大好きな青髭 (新潮文庫)