人物

『火垂るの墓』の高畑勲監督の死を悼んで

日本のアニメーション界を長らく牽引してきたスタジオジブリの高畑勲監督が享年82歳で永眠されました。巨星墜つとは高畑監督のような方がこの世を去ることを云うのでしょう。高畑監督の代表作『火垂るの墓』を初めて観たときの衝撃は言葉にならないくらい強…

生誕百年ユージン・スミス展@東京都写真美術館 + 講演会

第二次世界大戦末期、カメラマンとして激戦の沖縄に従軍していたユージン・スミスは、命こそ取り止めめたものの、日本軍の追撃砲弾で重傷を負い、1年あまりカメラを構えることができませんでした。ユージン・スミスの代表作のひとつ、"The Walk to Paradise …

桂文枝師匠の創作落語にかける情熱

中学生の頃、古典落語に嵌って、落語研究者の興津要さんが編集した講談社文庫版『古典落語』シリーズを次々と読破したものです。身近に寄席がなかったせいもありますが、専ら活字を通して古典落語に親しんでいきました。「こんにゃく問答」や「強情炎」のよ…

「不可能」の反対は「可能」ではない、「挑戦」だ! by Jackie Robinson

最近、テレビドラマで主人公が「不可能の反対は可能ではない、挑戦だ」と語るシーンがありました。ピーンときた視聴者も多かっのではないでしょうか。その台詞の主、数々の名言を遺したジャッキー・ロビンソン選手のことを書いてみたくなりました。[ ジャッ…

ヴァージニア・リー・バートンのちいさいおうち展(後編)

男の子ふたりに恵まれたジニーはその息子たちのために絵本を書き始めたのだそうです。長男アリスのために『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』(村岡花子訳)を、そして次男マイクには『マイク・マリガンとスチーム・ショベル』(石井桃子訳)を書き上げたといい…

ヴァージニア・リー・バートンのちいさいおうち展(前編)

大人になっても手離せない絵本のひとつがヴァージニア・リー・バートンさんの『ちいさいおうち』です。ときどき、HOUGHTON MIFFLIN COMPANY版を手にとって頁をパラパラするだけで懐かしい感覚に浸れるから不思議でなりません。そんな大好きな絵本にまつわる…

蓮池薫さんが語る北朝鮮〜北朝鮮と国交がない日本はマイノリティ〜

5/24付け朝日新聞朝刊に北朝鮮の拉致被害者のひとり蓮池薫さんへのインタビュー記事が掲載されていました。連日報じられる北朝鮮の核・ミサイル関連ニュースに隠れて、最近は、拉致被害者の再調査問題が埋没しつつあるように感じていただけに、取材記事は改…

生誕150年展で知る「公園の父」本多静六の生涯〜その2 奇蹟の森〜

明治神宮は東京オリンピックが開催される2020年に鎮座100年を迎えます。それに先立って行われた生物調査の成果を収めた公式写真集『生命の森 明治神宮』を見ると、改めて本多静六博士の未来を見通す慧眼に感服させられます。社殿を包み込む森が育まれたお蔭…

生誕150年展で知る「公園の父」本多静六の生涯〜その1〜

本多静六博士は、明治神宮や日比谷公園をはじめ全国各地で70箇所以上の造園に携わり、日本の「公園の父」と呼ばれる立志伝中の傑物です。博士の偉業は短いブログでは到底ご紹介しきれないのですが、日比谷公園内にあるみどりのiプラザで開催中(〜10/19まで…

『牧野富太郎自叙伝』を読む〜牧野記念庭園と共に〜

小学生の頃、庭いじりが好きだった祖父の書棚で『牧野植物図鑑』を目にしたことをきっかけに、牧野富太郎(1862-1957)が世界的植物学者だと知りました。男の子は、植物よりも動物や昆虫に圧倒的に興味をそそられるものですが、自分は新種の植物を見つけて系…

文京区立森鷗外記念館を訪れて

行こう行こうと思いながら2年以上も経ってしまいましたが、ようやく森鷗外記念館(2012年11月開館)を訪れることができました。記念館の建つこの地(文京区千駄木1-23-24)に、鷗外は1892(明治25)年から亡くなる1922(大正11)年まで過ごしたのだそうです。…

渡辺一枝さんの聖山カイラスの講演会を聴いて

先月23日、市谷にあるJICA地球広場で開かれた渡辺一枝(いちえ)さんの講演会を聴いてきました。ご存じない方には、作家の椎名誠さんの妻女と紹介しておきましょう。二十代の時分、椎名誠さんの代表作『岳物語』を読んで、渡辺一枝さんの初期のエッセイにも…

大西巨人さんの死去を悼んで

大西巨人さんのライフワーク『神聖喜劇』を知ったのは、大学教養部の哲学の授業のときでした。たまたま最前列で聴講していたら、担当教官の水野一教授がなんの拍子からか「授業を最前列で聞くなんて愚の骨頂だよ」と宣い、大西巨人の『神聖喜劇』の話を始め…

宮下均君の死を悼んで

老親を見送る世代になったせいか、ここ数年、歳末にかけて年賀欠礼の葉書が届くことが多くなったように思います。学窓を離れ幾星霜、年賀状の遣り取りだけが消息を知る術になっている友人も少なくありません。ところが、昨日届いた喪中欠礼状は友人の奥様が…

行正り香さんのキッチンスタジオ

家内ご贔屓行正り香さんが昨夜ソロモン流に登場しました。我が家のアイランドキッチン内部の棚には彼女のレシピ本(左の本もお気に入りです)が何冊も収まっています。番組によれば、すでに30冊以上出版されているそうです。賢人の優れたところは、高級食材…

NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」に寄せて

昨夜放映された「日本海海戦」を以って3年越しのNHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」が終了しました。もうこれでおしまいかと思うと名残惜しくてなりません。原作者及びドラマ制作者に感謝の意を込めてドラマの感想を書き記しておこうと思います。ドラマ化へ…

スティーブ・ジョブズ氏を悼んで

10月5日に56歳の若さで他界したスティーブ・ジョブズ氏を悼む声が日増しに増幅しているように感じます。オバマ大統領は「世界はビジョナリー(先見の明のある人)を喪った」と哀悼声明を発表しました。今週、ニューズウィーク日本版は「ジョブズ 天才の軌跡…

向田邦子さんの命日

8月22日の今日が向田邦子さんの30年目の命日にあたります。天声人語や春秋のコラムニストが申し合わせたように飛行機事故で亡くなった向田邦子さんのことを取り上げています。物書きにとって今も向田邦子さんが眩しい存在だということが分かります。丸谷才一…

建築家坂茂さんの偉業

紙の建築で知られる坂茂(ばんしげる)さんが震災後の一時避難場所に身を寄せる大勢の被災者のために大活躍されています。最近、タイム誌が<世界で最も影響力のある100人>に震災地で懸命に復興にあたる2名の日本人を選びましたが、坂さんも選ばれて然るべ…

寺田寅彦と防災教育

連日の余震で大地震が首都圏を直撃するリスクが極めて高まっているように感じます。今回の大震災を通じて、我が祖国日本が地震列島であったことを全国民は否応なく再認識させられたわけです。メディアは日々拡大する激甚災害の詳細と原発リスクの顕在化の報…

香川照之さんの講演を聞いて« l'essentiel est invisible pour les yeux »

次男が通う学園の文化講演会にOBの香川照之さんが登檀すると知って久しぶりに学園講堂まで足を運びました。例年、学校傍のホテルで開催される文化講演会が今年は香川さんたっての希望で学園講堂に変更されたのだそうです。結婚式も学園のチャペルで挙げた香…

スピーチライターという仕事〜セオドア・ソレンセン氏の偉業〜

年の瀬を迎えると今年鬼籍に入られた方の回想記事が目立つようになります。ケネディ大統領の側近として数々の名演説の草稿を執筆したことで知られるセオドア・ソレンセン氏も今年10月31日に82歳で他界しています。"Ask not what your country can do for you…

中園ミホさん

毎週土曜日の"be on Saturday"(朝日新聞)に掲載される<逆風満帆>を愛読しています。今週は脚本家の中園ミホさんのインタビューが紹介されています。一度、南青山で同業の大石静さんとご一緒のところ、名刺交換させて頂いたことがあります。現在TV朝日系列…