蓮池薫さんが語る北朝鮮〜北朝鮮と国交がない日本はマイノリティ〜


5/24付け朝日新聞朝刊に北朝鮮拉致被害者のひとり蓮池薫さんへのインタビュー記事が掲載されていました。連日報じられる北朝鮮の核・ミサイル関連ニュースに隠れて、最近は、拉致被害者の再調査問題が埋没しつつあるように感じていただけに、取材記事は改めて拉致問題を考える契機を与えてくれました。

蓮池さんは1957年生まれ、中央大学在学中の1978年に郷里柏崎市で拉致されました。それから20年以上経った2002年、日朝首脳会談(小泉・金正日会談)後、他の4名の拉致被害者と共に蓮池さんの電撃的帰国が実現しました。あくまで一時帰国という建前でしたが、世論や拉致被害者家族会の強い要望に呼応して、政府はその建前を翻しました。2004年5月には蓮池・地村夫妻のお子さんも帰国しています。

日本政府が認定した拉致事案は12件、被害者は17人です(実際はもっと多いと指摘されています)。残りの12人についての北朝鮮側の主張は、8人死亡で4人は入境せずです。勿論、この主張を鵜呑みにするわけにはいきません。拉致が始まった1970年代から30年以上が経過し、拉致被害者の家族も高齢化し、亡くなったり体調を崩されている方も多いそうです。蓮池さんが指摘するとおり、ご家族が生きているうちに再会が叶わなければ解決の意味がありません。解決までに残された時間がきわめて限られていることを、政府も私たちも再認識しなければなりません。もう一刻も猶予がないのです。

メディアに取り上げられることの多い横田早紀江さん(めぐみさんのお母様)が集会でこう語ったそうです。

<拉致されて40年も救えずにいるのは、国の恥>

家族と過ごす平穏を日々突如奪われた被害者のご家族の方々の胸中を思うと、かける言葉が見当たりません。「家族はもう限界だ」という蓮池さんの言葉に深く思いを寄せて、政府には不退転の決意で年内の被害者全員の帰還を実現して欲しいものです。

世界的に孤立を深める北朝鮮と国交のない日本、実は世界ではマイノリティだということをご存知でしょうか。北朝鮮と国交のない国は日本も含めわずか35ヶ国に過ぎません。ASEAN10ヶ国(半分は平壌に大使館を設置しています)を含め164ヶ国、世界の80%以上の国々が北朝鮮と国交を結んでいるのです。緊張の続く朝鮮半島、対立軸を旗幟鮮明にするのは得策ではないように思えてなりません。いつまでも「近くて遠い国」でいいはずはありません。拉致問題解決と引き換えに、国交正常化の実現を検討すべき時期を迎えているのではないでしょうか。