建築家坂茂さんの偉業

http://s.njuice.com/v2/b8/b8568761be5ddd93f3f66a991918694c_large.jpg紙の建築で知られる坂茂(ばんしげる)さんが震災後の一時避難場所に身を寄せる大勢の被災者のために大活躍されています。最近、タイム誌が<世界で最も影響力のある100人>に震災地で懸命に復興にあたる2名の日本人を選びましたが、坂さんも選ばれて然るべき方だと思います。

連日、間仕切りのない体育館で避難生活を送る被災者の様子をメディアは憚ることなく報じています。TVカメラ越しの映像は容赦なくありのままの事実を暴露していきます。人が歩くたびに舞い上がる無数の埃に顔を顰める母親、布団を被りながら着替えをするお婆さん、鼾や歯軋りで眠れない日々を過ごす老夫婦・・・私生活の平穏やプライバシーを奪われた上、今なお生活再建を展望できない被災者の苦悩やストレスは如何許りでしょうか。

そんな被災者の悩みを解決するために、坂さんは独自に開発した紙管をトラックで大量に避難場所に搬入してボランティアの力を借りて次々と間仕切りを拵えていきます。紙管の端には予めほぞ組みをするための穴が開けられているので、ボランティアは手だけで容易に組み立てを行えます。間仕切りが完成すると簡易のカーテンが取り付けられ上部には段ボールで表札が掲げられます。余震が来ても軽量の紙管であれば被災者の安全確保に支障はありません。仮設住宅が出来ればカーテンはそのまま再利用出来ます。何と素晴らしいアイディアではありませんか。勿論、一朝一夕で実現したアイディアではなく、1995年の阪神大震災や2005年に津波被害を受けたスリランカで復興住宅建設に従事された経験の賜物なのでしょう。難民キャンプや罹災地の住宅問題に一貫して関わってきた建築家の鋭い観察眼の奥に優しい眼差しを感じます。