広尾・レストランマノワ閉店に寄せて

ミシュランの星付きレストランばかりがもて囃される昨今、自分の舌で発掘した飲食店には人一倍の思い入れがあります。昨年は、お気に入りのフレンチや天麩羅屋さんが閉店して、名状し難いショックを受けています。

当ブログであえてレストラン名を伏せてご紹介していた広尾のレストランマノワ(写真下・公式HPより)が、昨年11月末、閉店していたことをつい最近知りました。家族や友人と訪れたこと数知れず、思い出の多いフレンチレストランでした。本当に自分の家のように寛げるレストランでした。コスパに煩い妻が推す唯一無二のフレンチレストランで、彼女のたってのリクエストでバースデーに2度利用しています。ウィークエンドの予約は激戦だったので、美味しいものに目がない親しい友人知己だけにこっそり紹介していたくらいです。そのなかのひとり、友人Hの配偶者が大層気に入ってくれて、先月、予約を取ろうとした矢先に閉店が判明。情けないことに、その友人Hから閉店を知らされました。早速、公式ブログを確認してみると、2023/10/31付けでオーナーソムリエ中村豪志さんの閉店ご挨拶が掲載されていました。

レストランマノワは、明治通りに面したマンション1階にこじんまりとした店舗を構えていました。採算面を重視するなら、プリフィックスに絞って営業もできたはずです。ところが、レストランマノワはコース料理の選択肢やデザート(写真・右下は紅玉のデザート)の選択肢が豊富で、12年間に渡って、季節ごとにハイクオリティなプレートを提供し続けてくれました。グラスシャパーニューにはじまり、ソムリエが薦めるワインセレクトがまた秀逸でした。他所ではめったに味わえないのがジビエ料理。狩猟免許を有するオーナー自ら、北海道でハンティングして来るくらいですから、こだわりが違います。蝦夷雷鳥(写真・左下は2020/11/14撮影)目当てに伺ったのは懐かしい思い出です。コロナ禍が終息してからの閉店の背後には、苦渋の判断があったものと推察します。昨年7月2日の店主ブログには、「働き方改革」と題して、完全週休2日と全スタッフの昇給2万円を約束したとあります。それから数ヶ月後の閉店宣言です。お客様が心底楽しめるレストランであると同時にスタッフ一同が経済的に報われる職場でなければ、有為な若者を飲食業界に引き付けられないという主張は真っ当です。しかし、オーナーの高潔な理想の前に立ちはだかる現実的桎梏は俄かに処し難いものだったのでしょう。

コロナ禍のせいにしたくはありませんが、足の遠ざかっていたことが心底悔やまれます。せめて閉店までにもう一度訪れたかった…..。

オーナーソムリエの中村豪志さんのお父様が、日本第2位の高峰・北岳の小屋主だったことを知ったのも最近のことです。狩猟もお父上直伝なのですね。北海道森町でブドウ栽培に乗り出したこともワイン系のコラムで知りました。近い将来、レストラン業界で再び羽搏く日を心から楽しみにしています。

オーナーソムリエの中村豪志さんにスタッフの皆さん、本当にお世話になりました。