初秋のカンテサンス

1年ぶりのカンテサンス・ランチでしたが期待に違わず初秋にふさわしいメニューでもてなしを受け大満足でした。開業から4年目を迎えるというのに予約の電話が鳴り止まないのも無理はありません。「カンテサンス」ではディナーのみならずランチ・メニューもMenu Carte Blanche(おまかせの1コース)だけですから、メニューを見ながらあれこれ悩む必要がありません。同じくミシュラン・3つ星の銀座「ロジェ」が正統派フレンチとすれば「カンテサンス」は創作フレンチと云っていいでしょう。ハレの日には<よそいき>のレストランもいいでしょう。その一方で気取りのないフレンチも捨て難くメニューの親しみやすさと居心地の良さという点では断然<カンテサンス>に軍配が上がるのではないでしょうか。「カンテサンス」は普段着のフレンチを装っていますがあくまで素材の持ち味を引き出すことにこだわり決して手を抜きません。そして、ゲストの好みがどうあれ<今日はどうぞこれを召し上がって下さい>というスタイルはシェフの自信の表れでもあります。仕入れもその日のゲスト数を計算出来ますので無駄が省けてある意味合理的です。さて、胆心のメニューはというと、ランチは7品、帰りしなに岸田シェフから品書きを頂戴したのでご紹介しておきます。

1)Soupe Champignons(キノコのスープ)
2)Assaisonement(塩とオリーブ油が主役、山羊乳のバヴァロワ)
3)Poireaux et Oursin(北海道のポロ葱と雲丹)
4)"Gure"(グレ 平兵衛酢とセロリのソース)
5)Pigeon Rôti(鳩の3時間ロースト ロックフォールとケッパー)
6)Coupe Rhubarbe(クープ・リュバーブ クレーム・ダンジュ)
7)Tarte Coco Ananas(ココナッツ・クリームを載せたパイナップルのタルト)

ひとわたり食した後はダージリンのセカンド・フラッシュをストレートで頂きました。最初のお皿は<うりぼう>(干支なので少し涙ぐむ^^;)を使ったキノコ仕立てスープ、秋雨で身体が冷えていたところに温かいスープですので絶妙のスターターでした。定番の山羊乳のバヴァロアではトツピングされたマカデミア・ナッツの食感を味わいつつ隠し味ブルターニュ産のゲラン塩とコクの豊かなバヴァロアとの相性の良さが楽しめます。メインのグレはメジナ科の魚でナイフを入れると岸田シェフの丁寧な火入れ仕事を確認出来ます。メインのソースも絶品でセロリを丹念に炒めたブラウンソースと赤玉葱にエシャロットと和製ライム(日向の平兵衛酢)を加えた赤いソースがお皿を彩ります。視覚効果も計算に入れた至高の一品です。肉料理は鳩の胸肉で多少抵抗がありましたが鴨料理に近い創作でタラゴンやライムが効いて楽しめました。デザートの二皿からは、素材の食感を損なわないような気配りが感じられました。白桃やイチジクをペースト状にしないところが岸田流なのだと改めて納得しました。パリ出張中にアラン・デュカスで正統派フレンチを経験しフレンチの奥深さを知るだけに、岸田シェフのあくなき挑戦には本当に頭が下がります。正統派フレンチの系譜を踏襲しながら常に創意工夫を重ねて新しい境地を拓こうとする若き岸田シェフからは目が離せません。