宇宙探査の夜明け〜祝・日本初の月面着陸成功〜

昨年4月、スタートアップ企業・ispace(9348)が挑んだ月面着陸は、ソフトウェアが正しく機能しなかったため失敗に終わりました。同社の分析によると、ソフトウェアが推定した高度とセンサーが実測した高度に5kmほどの乖離が生じて、着陸船の燃料が尽き、月面に時速360km以上のスピードで衝突したということです。月面ソフトランディングの難しさを如実に物語る民間企業による初トライでした。

それから9ヶ月目の1月20日未明、JAXAの探査機SLIMが3度目の挑戦にして日本初の月面着陸を成功させました。昨年8月にインドが月面着陸(氷が存在するかも知れない南極付近)を成功させたので、日本は5ヵ国目の成功国になります。JAXAがロケット打ち上げに失敗する度、55年前の1969年7月24日に有人月面着陸(アポロ11号)を成功させた米国の技術力の高さをこれでもかと思い知らされてきました。それだけに今回の偉業達成を素直に喜んでいます。着陸地点の誤差を100m以内抑えた「ピンポイント着陸」は、これまでの数キロから十数キロ誤差を大幅に縮小した世界に誇れる成果です。JAXAの深夜の会見映像を見ると、傾斜地への着陸や観測機器の軽量化など、ほかにも目を瞠るような成果があることが分かりました。

一方、課題は山積のようです。SLIMの機体に貼り付けた太陽電池が稼働していないことが分かり、バッテリー依存となり、運用期間が短くなるそうです。

ここで注目したいのは、月面探査も含めた宇宙探査に携わる民間企業の創意工夫。着陸に伴い2台のロボット「LEV-1」と「LEV-2」が放出されています。車輪で走行する「LEV=2」の開発に協力したのは、玩具メーカータカラトミー(7867)です。「LEV-2」は着陸と同時に球体が左右に拡張変形し、砂質で凹凸のある月面を自在に走行することができます。玩具メーカーが長年培ってきた軽量化や変形機構の技術が、宇宙で役立つというわけです。

昨年末に上場した九大発ベンチャーのQPS研究所(5595)は、小型SAR (Synthetic Aperture Radar)衛星を手掛ける有望企業。光学式の衛星と比べると、天候に左右されず観測できるのが強み。カメラに依らず、電磁波を放射し反射波を検出するためです。また、従来のSAR衛星に比べて、同社の小型SAR衛星「QPS-SAR」は重量が20分の1、製造コストに至っては100分の1と究極の「縮み志向」を実現しています。

米国主導の「アルテミス計画」に日本が多角的に関わることが決まっています。日本人宇宙飛行士が月面に立つ日もそう遠くないのでしょう。