山崎元さん逝く・YouTubeのラストメッセージ

先週金曜日(1/5)、朝日新聞デジタルで経済評論家・山崎元さんが亡くなったことを知りました。彼のことを詳しく知らない人でも、彼が残したメッセージを知れば、自ずと山﨑さんの為人を想像できるのではないでしょうか。

<99%の投資信託はゴミで新NISAはeMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)・通称「オルカン」一本に投資すべきである>

新NISA導入の遥か以前から、一貫して銀行や証券会社が販売する金融商品の欺瞞性に対して舌尖鋭く警鐘を鳴らしてきたのが山崎さんです。証券会社に擦り寄って楽観的な相場見通しばかりを語る評論家もどきが跋扈するなか、「金融界の不都合な真実」を炙り出して鋭く批判できる数少ない論客でした。

享年65。「人生100年時代」が叫ばれる今日、あまりにも早い旅立ちです。元旦に旅立たれたのは、山崎さんらしい美学の貫き方に映ります。かつて勤務していた職場・パリバ証券(現BNPパリバ証券)で幾度かミーティングしたご縁もあって、闘病生活に入られてからの発信を密かに注目していました。ダイヤモンドオンライン「山崎元のマルチスコープ」では、昨年12月20日の<山崎元、最後に贈る「ウイスキー」ガイド>が最後の配信となりました。黒田前日銀総裁の「私の履歴書」に言及した記事をはじめ、普段と変わぬ冴え渡った切り口に感心するばかりです。

何より驚かされたのは、12月下旬にYouTubeで公開された次のトークです。


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訃報から逆算すると、亡くなる約1週間前のトークセッションです。50分弱に及んだ番組は、ほぼ山崎さんの独演会になりました。視聴回数は53万回超え、反響の大きさが窺えます。ビジネスパーソンには「先ず働き方を変えてみなさい」と訴えます。会社に搾取されないような生き方を模索しなさいというメッセージだと受け止めました。転職も含め、人生において適切なリスクを取ることを勧めています。もし人的資本において思うようにリスクが取れないのならば、株式と関わることの大切さを諄々と説いておられました。株式投資にはリスクプレミアムが伴います。人的資本に関しても同様だと考えれば、転職もポジティブに捉えられるはずです。淡々とそう語る言葉から気概が伝わってきます。転職を「猿の枝渡り」に喩え、進行役の元日経記者・後藤さん共々、「最初の転職は緊張した」と仰るのを聞いて、転職12回を数える転職王・山崎元にしてそうだったのかと頻りに頷いてしまいました。バブル経済が弾けた90年代後半、転職が一般的になって、ようやく時代が山崎さん(1981年三菱商事入社・1984年退社)に追いついた恰好です。

最期までブレない山崎さんであり続けました。生前の彼を知るひとりとして、心よりお悔やみ申し上げます。