トムラウシ山縦走|クマとの初・接近遭遇を振り返る

今年ほどテレビや新聞でクマが取り沙汰された年はなかったのではないでしょうか。人里に降りてきて車道を我が物顔に進むヒグマ、人家の柿の木によじ登って収穫前の柿を喰らうツキノワグマ、人家に侵入し住人と鉢合わせしたツキノワグマなど、枚挙に暇がありません。以前なら、クマが人里に近づくのはドングリの不作など食料不足が主因でした。近年は、そんな単純な理由からだけではなさそうです。地球温暖化による生態系や植生の変化、狩猟人口の減少、クマの行動変容、山村の過疎化等、様々な要因が複雑に絡み合っているのです。つい最近、冬眠しないクマが寒波が来ても出没するというニュースさえ耳にしました。

今年7月上旬、とうとう自身初のクマとの接近遭遇を経験しました。「大雪の奥座敷」と呼ばれるトムラウシ山をめざす縦走中の出来事です。銀泉台から入山し、白雲岳避難小屋で1泊。小屋からほど近い水場にヒグマが度々現れており、水を汲みに行くときの緊張感は言葉になりません。ほどなく、白雲岳避難小屋は一時利用禁止になりました。

2日目に五色岳を経て「神遊びの庭」に向かう途中、雪渓越しにヒグマを目撃しました。その前後に砂利道の2箇所でヒグマの大きな糞を見つけています。雪渓を挟んでの遭遇だったので思ったより冷静でいられました。距離は50mくらいだったでしょうか。同行者のひとりがホイッスルを盛んに鳴らすので静止しました。刺激したくなかったからです。ヒグマの生息域に僭越にも侵入しているのは我々の方ですから、「お邪魔しています」という謙虚な姿勢が求められます。拡大した写真からは、子連れの母グマのようにも見えなくありません・・・。糞の具合からして、ヒグマが登山道を横切ったのは今しがたのことです。もしそこでばったり遭遇していたら、きっと身に危険が迫ったことでしょう。スマホで数枚撮影し静かに先を急ぎました。

10月中旬、磐梯山ゴールドラインをクルマで走行中、今度はツキノワグマが車道を横切るのを目撃しました。助手席にいた妻が発見し声を上げたので気づきました。あっという間の出来事でしたが、妻曰く子グマのサイズだと。

九州ではツキノワグマは絶滅し、四国でも絶滅危機にあるそうです。かたや、本州ではツキノワグマの個体数は増加中だそうです。北海道のヒグマが市街地に現れるのは今や日常茶飯事。今年、2度もクマと遭遇したことで、クマとの共生について深く考えるきっかけを与えられました。