晩秋の奥穂高岳へ(前篇)~<氷壁の宿 徳澤園>に前泊する~

東京から中央自動車道経由、上高地手前の沢渡駐車場まで約3時間半。東京を出発した10月17日(日)は生憎の雨天でしたが、11時過ぎには西の空が明るくなって沢渡(さわんど)駐車場に着く頃には雨は上がってくれました。涸沢カールの紅葉は10日ほど前にピークを迎え、北アルプスでは一気に冬支度が始まろうとしていました。目指すは北アルプス最高峰の奥穂高岳(3190m)、最前線の山小屋・穂高岳山荘によれば、いつ降雪があってもおかしくない由。初日は上高地に前泊する3泊4日の行程を組みました。3泊目はテント泊なので重装備、総重量を計ってみると60ℓザックで約12キロありました。上高地BTから1泊目の<氷壁の宿 徳澤園>まで7km・2時間、快晴なら河童橋からは見えるはずの穂高連峰や岳沢は雲に隠れて殆ど見えませんでした。

気温は12度、手袋をしていないと手がかじかむくらいの寒さでした。セオリー通りウェストハーネスを腰骨の上にくるように調整して締め、ザックの重量の過半が腰にかかるようにすると、高低差が殆どない往路7kmの行程はさほど苦になりませんでした。

<氷壁の宿 徳澤園>を訪れるのは5年ぶり。2016年の紅葉シーズンに涸沢カールを訪れた帰路、併設のみちくさ食堂に立ち寄って以来です。1955年に起きたナイロンザイル切断事件に取材した井上靖さんの小説『氷壁』に登場する徳沢小屋は、<氷壁の宿 徳澤園>のことです。受付には大輪のカサブランカ、階段踊り場にも生け花が飾られています。丁寧な接客、ハイセンスな調度品、隅々までお掃除が行き届いている点など総合勘案すると、山小屋というより、ミニ上高地帝国ホテルといった佇まいです。場所柄、穂高連峰槍ヶ岳への前線基地という位置づけですから、ハイシーズンは登山客で賑わうに違いありません。ところが、閑散期に差し掛かったこの日、宿泊客の過半は上高地観光が主目的の高齢者グループのようにお見受けしました。

写真のように相部屋(HOTAKA)はカプセルホテルのように区切られているので、雑魚寝状態の山小屋と違って、ほぼプライバシーが確保されています。シーツ、布団カバー、枕カバーは新品ですし、スマホの充電スペースも設けられています。イワナの塩焼きやローストビーフが供される夕食の満足度も上々。相部屋1泊2食付き13500円は大変お値打ちだと思いました。リピーターが多いのも頷けます。朝食をお弁当に振り替えての6時出発はいかにも勿体なかったと、翌朝、後悔の念に駆られました。来シーズンは、蝶ヶ岳を狙って登頂後の後泊で利用しようかと思案し始めたところです。

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