紅葉シーズンを迎えた千畳敷カール&木曽駒ヶ岳(後篇)

ホテル千畳敷の裏手の駒ヶ岳神社で参拝を済ませ、遊歩道を15分ほど進むと八丁坂分岐に差し掛かります。途中、ナナカマドの実が赤く色づき、山肌は茜色や黄金色に染まっています。あと1週間もすれば紅葉のピークを迎えることでしょう。八丁坂分岐から急坂を40分ほど歩くと、展望の利いた乗越浄土(のっこしじょうど)に到着です。足取りが重たそうな登山者を横目に軽快なピッチで先を急ぎます。視界抜群のこの日にかぎっては、スプーンで抉り取ったような氷河地形・カールのどの辺りを自分が進んでいるのかがよく分かります。振り返れば、伊那谷の奥に連なる南アルプスの稜線まで一望できます。稜線から飛び出したような富士山もはっきり確認できました。登山道はよく整備されていて、凹凸の顕著な急斜面数ヶ所に金属製の梯子が設置されているので危険箇所は殆どありません。さはさりながら、登山者の数を考えると登山道はお世辞にもゆとりがあるとは言えません。上りと下りの登山者がすれ違う場合には、原則どおり、譲り合いの精神で上り優先を心掛けましょう。この時期、どうしたって登山道の渋滞は避けられません。


乗越浄土を左手へ進み、大きく右へ迂回して中岳を目指します。乗越浄土から山頂までコースタイムは約1時間。その間に、宝剣山荘、天狗荘(写真下)、頂上山荘と3つも山小屋があります。先月登った仙丈ヶ岳然り、人気の百名山には必ずといっていいほど泊まりたいと思わせる山小屋が複数存在するものです。<木曽駒ヶ岳>の場合、見晴らしのいい鞍部に山小屋があるので、ご来光や夕焼け目当ての小屋泊プランやテント泊(頂上山荘にテン場あり)も視野に入れておくべきでしょう。

少しずつ雲量が増えてきましたが、ほぼ100点満点の秋晴れです。こんなに汗をかかない快適な登山は久しぶりです。登山開始から1時間半で山頂に到着しました。8年前の同じ時期に、山頂から手の届くような距離に聳える御嶽山が突如噴火し、火口付近に居合わせた登山者58人が死亡しました。そして、今なお5人が行方不明のままです。<木曽駒ケ岳>の頂きで御嶽山の方を向いて心の中で手を合わせ、立派な鳥居の先にある木曽駒ケ岳神社奥社を参拝しました。

午後からのロープウェイ待ちを避けるべくピストンの往復にしたため、予定どおり正午過ぎにホテル千畳敷に戻りました。ロープウェイの千畳敷駅で待機していると、ひんやりとした空気が頬を撫でます。日増しに秋色が深まっている証です。午後から蓼科ステイ先へ移動する関係上、断腸の思いで宝剣岳や濃ヶ池経由の下山も見送ったので、次回は余裕をもった日程で空木岳方面へも展開したいと思っています。