地方活性化の切り札「LRT」|宇都宮市の英断

当ブログで両親の故郷・岐阜市(県庁所在地)の衰退に触れたのは8年前のことです。その際、岐阜県が鉄道旅客域内移動率全国最下位だと指摘しました。移動率は以下の算式で導かれます。

鉄道旅客域内移動率=(当該地域から出発した旅客数)÷(当該地域から出発した旅客数+当該地域に到着した旅客数)

日本地図(下)で青や緑で塗られた地域、例えば岐阜県奈良県では、住民の多くが名古屋圏や大阪圏に通勤(通学)する結果、鉄道旅客域内移動率が低迷しているわけです。最近のデータが入手できないので現時点の動向は不詳ですが、データ公表時の2007年当時と大きな違いはないと思われます。そうだとすれば、大都市圏に依存する周辺都市の財政的・経済的苦境は明らかです。岐阜市内線として名鉄が運営していた路面電車は2005年に全面廃止されています。これから言及する宇都宮市とは真逆の選択を岐阜市(&名鉄)はしたわけです。名鉄から20億円で路線を引き受けるチャンスがあったにもかかわらず、巨額の税金投入を渋った岐阜市は、専用路線を設けて都市交通網を再整備する千載一遇のチャンスを見送ってしまったのです。

8月26日、JR宇都宮駅と栃木県芳賀町を結ぶ次世代路面電車LRT(Light Rail Transit)」が開業したと報じられました。国内で路面電車が開通するのは75年ぶりだそうです。「ライトライン」と名付けられた車両のカッコいいこと!人口減少がかつてない勢いで進行するなか、地方都市が率先して実現しなければならないのは「コンパクトシティ」化です。環境負荷が小さく、高齢者に配慮した低床式車両の導入は地方活性化の起爆剤になることでしょう。

昨年GWに立山黒部アルペンルートを南下しようと富山市を訪れたとき、JR富山駅前が地方都市とは思えないような洗練された佇まいだったことを思い出します。富山市は2006年に「LRT」を開業、2020年に全長15.2kmのネットワークを完成させて、市町村合併で郊外に拡散した都市機能を集約させることに成功しました。富山市の地価が9年連続で上昇したと云いますから驚きです。

ヨーロッパには路面電車(トラムカー)が走る町が数多くあります。90年代初頭、チューリッヒに駐在していたとき、通勤で毎日トラムカーを利用していました。ウィーン(オーストリア)、プラハチェコ)、ワルシャワポーランド)、ブタペスト(ハンガリー)、アムステルダム(オランダ)、ヘルシンキフィンランド)など、市民の足としてだけでなく観光の足としても、トラムカーは存在感を発揮しています。

LRT」はこれからでも、交通弱者に優しい路面電車のある地方都市の未来は明るいのではないかと見ています。札幌、函館、京都(嵐電)、岡山、広島、熊本と聞いて、誰しもそう思うのではないでしょうか。