おひとり様の反乱〜スープストックは誰のもの?〜

今年4月、スープストックトーキョーが無償で離乳食を提供すると発表したら、ネットが炎上したのだそうです。キッズセットや離乳食を提供することがなぜ非難されるのか、最初は理解に苦しみましたが、どうやら静かに食事したいおひとり様女性客が新サービスに猛反発したようです。

大手町で働いていた頃、丸の内オアゾの店舗を冬場によく利用していましたが、確かに女性比率はかなり高かったように思います。立地上、親子連れが入りにくい雰囲気はあったにせよ、ファミリーを拒む空気はありませんでした。創業時(1999年)の事業コンセプトには「女性がひとりで気楽に入れるファストフード」とあったそうです。まったくのブラインドでした。当時、自分も含めた男性客は「私たちの聖域に入って来ないでよ」と煙たがられていたのかも知れません。

会社にしてみれば、創業以来のコアな女性客層が<私たちの大切な居場所を荒らさないで!>と予期せぬ反乱を起こし、困惑しているといった構図でしょうか。「スープストックは誰のもの?」とメディアが報じるのも無理はありません。飲食業は総じてコロナ禍で大打撃を受けました。競合他社が少ないスープストックとて新たなブランド価値を求めて変化しないわけにはいきません。子育て支援は社会的な要請でもあります。乳飲み子や幼児を抱えた母親に優しい店舗づくりに、おひとり様を排除する狙いなどあろうはずもありません。寧ろ、外食を敬遠しがちな子育てファミリー層を支援する素晴らしい取り組みではありませんか。

店内が騒々しかったら、自分なら、テイクアウトして立ち去ります。それも嫌なら黙ってスープストックと訣別し他のファストフードに鞍替えすればいいだけの話です。スープストックの客単価は1000円超えですから、選択肢はほかにもあるはずです。それにしても、反乱を起こしたおひとり様がモンスターカスタマーにしか見えないのは気のせいでしょうか。あえて狭量の極みと言い換えます。冷静になって少し考えてみれば、好立地の狭小店舗に親子連れが押し寄せて来る可能性はさほど高くないと思います。過剰反応もいい加減にしろと云いたくなります。

一方、スープストック経営陣にしてみれば青天の霹靂だったことでしょう。顧客のセグメンテーションが飲食店にとっていかに重要かを思い知らされる出来事です。万一、客離れに繋がるようなら手痛い誤算になります。事の首尾は果たして吉とでるのでしょうか?反発の声とは対照的に、炎上に毅然と対応した会社のブレナイ姿勢に賞賛の声も上がっているそうです。 願わくば、幅広い客層に支持されて会社の業績向上に繋がりますように。