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マエストロ鈴木雅明氏が語る「マタイ受難曲」(21-6-20)

先月20日、「マタイ受難曲を語る」と題した出版記念講演を聴こうと朝日カルチャーセンター新宿教室へ足を運びました。オンライン受講も可能でしたが、肉声を聞きたくて最後の一席に滑り込みました。勉強熱心な高齢者が目立つカルチャーセンターはどちらかといえば苦手な存在。スポットで興味のある講座があれば参加する程度なので、今回は数年ぶりの新宿教室(@新宿住友ビル10階)訪問になります。ちなみに、今回の講座料金は4565円(受講料4400円+設備費165円)でした。

講師はバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)音楽監督を務める鈴木雅明氏。本講座は、4月に出版されたばかりの著書『バッハ、神と人のはざまで』(音楽之友社)の記念講座という位置づけです。

バッハ(1685-1750)が42歳の頃、作曲したとされる「マタイ受難曲」(BWV244)はイエス・キリストの受難を主題とした荘厳な楽曲です。初演は1727年4月11日@ライプツィヒ聖トーマス教会、8年後に楽曲は改訂され再演されています。演奏時間が3時間に及ぶ全68曲の大作ですが、バッハが作曲したもうひとつの受難曲「ヨハネ受難曲」と比べると、一人称による瞑想的な内容を孕んだコラール(会衆歌)やアリアが重要な役割を果たしているのだそうです。キリストの死で終わってしまう悲劇的な「マタイ受難曲」ですが、その先のキリストの復活を意識して聴くことがポイントです。構成は、教会の礼拝構造そのままに、「聖句」、「自由詩」(詩人:ピカンダー)、「コラール」に分かたれます。毎年、BCJ聖金曜日や復活祭に合わせて「マタイ受難曲」を演奏するのだそうです。マエストロは、演奏の都度、重々しいスタート(第1曲)に項垂れることがあると吐露しながら、何度演奏しても飽きることがないと言います。

周到に計画されたという「マタイ受難曲」の典型的なパートは第45曲bと第50曲bの「十字架につけよ」という部分。先の著書には<各声部が驚くほど整然と階段上に登場した、第49曲「ただ愛により」を中心にシンメトリーを築く様は、激しい響きであると共に、驚くほど図形的象徴的役割を果たしています>とあります。もう少し講義のエッセンスを披露したいところですが、咀嚼し切れていない部分の方が多いので、別の機会に譲ることにします。

興味深かったのは、通常演奏される1736年の改訂後期稿において、赤インクで聖書テキストが強調された美しい自筆譜が残されているという事実。バッハの時代、スコアはインクで書かれ、後年、ベートーベンの時代になると鉛筆に取って代わられるのだそうです。

神戸ご出身の鈴木氏による関西弁も交えたユーモア溢れる講座は、質疑応答で延長戦に突入。氏のバッハ愛は炸裂しっ放しでした。人類史上最高の音楽遺産も言われ、作曲家の武満徹坂本龍一も絶賛する「マタイ受難曲」を、来年こそBCJの演奏で聴いてみようと思っています。