金投資が止まらない~足元の金先物価格は1860米ドル前後で推移~

凡そ3年半ぶりにほんの少し金地金を購入しました。先月8月4日終値でNY金先物価格が節目となる2000米ドル(=1トロイオンス)を突破し話題になりましたが、足元では1900米ドルを割り込み少し過熱感が和らいだからです。ニッセイアセットマネジメントのレポート(2020/8/11)は、金先物価格急騰の理由を次のように解説しています。

<金価格が急上昇している要因は、さまざま考えられます。最大の要因は、新型コロナウイルス感染再拡大や米中の対立の深刻化などを背景とした世界景気の先行き不透明感から、相対的に安全資産とされる金が買われる動きが加速していることが考えられます。>

<この米ドル安基調に対し、一般的に資産価値が目減りしにくいとみなされている金は、米ドルの代替資産とされているようです。米連邦準備制度理事会FRB)は、2022年までゼロ金利の継続を示唆しており、当面の間、米国金利は上昇しないとの見通しも金価格を押し上げている要因と言えそうです。>

コロナ禍の下、安全資産としての金への資金流入に加え、米ドル安・低金利継続が金先物価格の下支えになっていると言えます。新型コロナ禍で世界経済は相当疲弊しているためV字回復は言うに及ばす緩やかな回復さえ期待薄ではないかとみています。チャートは過去5年の金先物価格推移です。

投資マネーが大量に金に流れ込む背景には、世界的低金利(実質金利はマイナス)の継続という由々しき事態があります。預貯金が1億円あったとしても、年間利息はわずか2000円足らずです。先進国の金利低下だけを見れば、30年以上も金利低下が続いているのです。米長期金利も早晩ゼロに向かうとさえ言われています。この世界的金利消失は、金投資をする者にとって極めて好都合です。金利のない世界」では、稀少性の高い資源の筆頭金にマネーが向かうのは理に叶っています。カリスマ投資家ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャ・ハザウェイが産金のバリック・ゴールド社に投資したと伝えられました。世界で資源開発を手掛ける五大総合商社への投資も似たような視点からかも知れません。

ゴールドマン・サックスによれば(2020/7/28)、金価格の12ヶ月見通しは1トロイオンス=2300ドル、銀価格も短期見通しを30ドルへと引き上げています。

田中貴金属HPによれば、これまで世界で採掘された金の総量は50mX25mX1~1.35mの国際基準プール約4杯分=約190,040トンだそうです。工業用需要が主体のプラチナに至っては5000トン程度と言われています。金の場合、地球上に残っている未採掘の総量はあと7万トン、しかも地下数千メートルの採掘困難な場所や海底にあると伝えられます。今のペースで年間3000トン前後産出していくと23年で金鉱脈は枯渇する計算です。そうなると、採掘された金を再利用するしかなくなります。スマホにも微量の金(1台あたり0.032g=224円相当)が使われていて、2020年東京五輪のための金メダル(必要量10kg)は廃棄スマホの金をリサイクルして賄われました。

直近主要国中央銀行金保有量ランキングを見ると、断トツで米国の金保有量(8133.4t)が高いことが分かります。外貨準備に占める割合も7割超、現金よりも金ということなのでしょう。ちなみに日本の金保有量は世界で9位の765,2t、一方外貨準備の大半は米国債が占めています。金利のない世界」が当たり前になった今こそ、金を資産ポートフォリオに組み込む絶好のタイミングではないでしょうか。