貴金属価格が急騰~適正な金銀比価は奈辺にありや~

この1ヶ月で貴金属価格が凄まじい勢いで上昇しています。田中貴金属が毎日公表している1グラム当たりの円建て小売価格を7/28と前月末の6/30と比較してみると、急騰ぶりがよく分かります。特にこれまで60円前後で放置されてきた銀の価格上昇が突出しています。過去40年の銀小売価格を振り返ってみると、1980年に最高値366.87円(ドル円220円台)を記録、直近では2011年の129.80円以来の高値になります。

金価格 7,354円(前月末6762円対比+8.7%)

銀価格 96.03円(前月末70.73円対比+35.7%)

プラチナ価格 3,621円(前月末3,180円対比+13.8%)

貴金属価格急騰の最大の理由は、世界的な超低金利政策の継続にあります。金に投資しても利息はつかないので、仮に米国債に5%前後の利回りがあれば、必ずしも金投資はベストな選択ではありません。ところが、米中貿易摩擦やイランとの緊張関係に加え、新型コロナウイルスによるパンデミックが地球規模で発生し、戦後最大の危機が世界経済の不透明要因となって、代替投資先としての金の価値を高めているというわけです。安全資産としての金価格は連日高値を更新し続けているのです。

国際的には貴金属は1トロイオンス(31.1g)あたりの米ドル建てで取引されるので、円ベースで投資する場合には為替水準にも要注意です。18世紀初頭から米国やフランスが金銀複本位制を敷いたので、金銀の交換価値を示す<金銀比価(Gold Silver Ratio)>は1:15.5と定められました。幕末には銀の価値が国際的水準より3倍以上割高に設定されていた(1:5)ために、銀が金に交換され大量に海外流出することに繋がりました。

もはや金銀本位制を敷く国は世界中どこにもありません。足元の金銀比価は76.5・・・適正な金銀比価は奈辺にあるのでしょうか。工業用途が多いプラチナと銀は、金に比べると投資需要は低迷しているようです。一般に金銀比価が80を超えると銀が割安と判断されるそうですから、このまま金価格が独歩高を続ければ、割安に放置された銀やプラチナに投機的需要が発生する可能性が出てくるのではないでしょうか。