歌舞伎座再開が待ち遠しい〜休演中も歌舞伎から付かず離れず〜

松竹歌舞伎会会員に毎月届く会報誌「ほうおう」7月号にも公演内容の記載がありません。
新型コロナウイルス感染防止拡大のため、公演すべてが中止になっているからです。会報誌が普段より薄っぺらくて寂しいかぎりです。

本来であれば、歌舞伎界挙げての世紀のイベント「十三代目市川團十郎白猿襲名披露」公演が5月から三ヶ月にわたって開催されるはずでしたから、自分も含めた歌舞伎ファンの落胆ぶりは形容し難いものがあります。8月再開!三部制の納涼歌舞伎で愉しませてくれたら、ファンもひと安心なのかも知れません。

休演中、NHKの「にっぽんの芸能」や「古典芸能への招待」を熱心に視聴、特に「中村吉右衛門の至芸 歌舞伎”寺子屋”」(2019年5月歌舞伎座)の吉右衛門さん演じる松王丸は圧巻でした。寺子屋で一番難しい役所は、松王丸が門口で1人ひとりの寺子の顔を見定めるところだと言われます。昨年の「秀山祭」で観劇した演目でしたが、テレビだと表情が大写しになって、役者さんの所作の巧拙が一目瞭然です。「寺子屋」のように何度見ても泣ける演目ほど、奥深いことが分かります。

「ほうおう」7月号巻頭は、公演案内に代わって、歌舞伎座よもやま話第2回でした。歌舞伎座の舞台機構は、細部に至るまで、様々な工夫が凝らされていることを改めて知りました。舞台に使われた約3千枚の檜板は伐採から丸2年もかけて用意されたのだそうです。廻り舞台の直径は十間(18.2m)、花道の長さと同じです。第五期歌舞伎座の廻り舞台の深さは、第四期の4.4mから16.4mへとずいぶん深くなり、大規模な舞台装置や転換に対応できるようになったのだとか。天井に組み込まれた音響反響板は、客席隅々までクリアな音が届けられるような工夫だそうです。照明はナマと呼ばれる色のない明かりが基本、衣装の鮮やかな色彩を際立たせるために、スポットライトのような陰影はご法度だということも初耳でした。

公演再開に向けて、テレビや会報誌「ほうおう」を通じて歌舞伎の真価がより見極められるよう、研鑽を重ねているところです。