コロナショックが直撃する宿泊業者の苦悩と格闘~めざすはディスカバー・ジャパン・アゲイン~

日経スペシャル「ガイアの夜明け~コロナショックを乗り切る!“ニッポンの宿”水面下の闘い~」(2020/5/5放送)が、コロナショックの直撃を受けている宿泊業者を緊急取材、その苦悩と格闘を詳しく伝えていました。掻き入れどきのGWに外出自粛を迫られ最も窮地に立たされたのは、宿泊業者に他なりません。写真はGW中の京都・渡月橋那覇市中心部の国際通りの様子です。やがて、夏休みがやって来ます。緊急事態宣言がなし崩しでズルズルと延長されれば、業界は致命的な打撃を受けかねません。

望み薄と知りながら、今週末、我が家は箱根に1泊2日で出掛ける予定でしたが、緊急事態宣言はあっさりと延長。やむなく、宿泊予約をキャンセルしたところです。箱根の観光一大スポット大涌谷も閉鎖されていますので、ホテルで軟禁状態というのも遣り切れません。予約受付けの担当者曰く、宿泊者は高齢者ばかりだそうです。現役世代のサラリーマンやOLにしてみれば、新型コロナウイルスに罹患して行動範囲について釈明ができなくなるリスクは取りたくないからでしょう。

近年急速に拡大してきた民泊サービスの市場規模は、今年、1297億円(冨士経済ネットワークス調)に達する見込みでした。ところが、数日前、世界最大手の民泊仲介サイト米Airbnbが従業員の約1/4に当たる1900人を削減すると発表、2020年の売り上げは昨年の半分未満に落ち込むそうです。

宿泊施設にしてみれば、仮に数組の宿泊客がいたとして、その僅かな客のために仲居を配置し厨房を稼働させなければならないというのは、却って非効率というものです。経済効率上、一定の稼働率が必要です。結果、多くの宿泊施設は休業に追い込まれ、廃業の危機に瀕しています。宿泊客9割減という数字は衝撃的です。従業員も過半は自宅待機、再稼働に向け従業員に給与を支払いながらリソースを温存する持久戦にも自ずと限界があります。

番組では、新潟の宿泊施設が客のいない今だからこそ出来る従業員のスキルアップや土産物の通販に取り組み姿を紹介していました。星野リゾートではコロナとの共存(ウィズコロナ)を前提に、館内でソーシャルディスタンスを死守する取組みを始めていました。志は良しとします。

その涙ぐましい努力には本当に頭が下がる思いですが、マスクをした従業員におもてなしされても、非日常であるべき旅の醍醐味は失われたままです。ウィズコロナはどう考えても本末転倒です。コロナ収束までの時間との闘いに必要な維持費は、国や自治体がサバイバルマネーとして給付するしかありません。GDPに占めるツーリズムの割合は数パーセントにも相当しますから、経産省は持続化給付金の規模をもっと拡大して速やかに支援する態勢を整えるべきです。

業界は、バブル崩壊リーマンショック東日本大震災原発事故と10年単位で起こるイベントを乗り越えてきたといいます。星野リゾート代表星野佳路氏は、年間約26兆円の日本の観光市場のうちインバウンド(外国人訪日需要)が占める割合は17%(4.5兆円)だとフリップを示しながら説明していました。思ったほど大きな数字ではありません。26兆のうち国内宿泊旅行は占める割合は60%強。コロナが収束しても、その先の感染リスクも考えると海外旅行は当面ハードルが高くなりそうです。アフターコロナのツーリズムは身近な旅の再発見に商機を見出すことになるのではないでしょうか。星野氏はマイクロツーリズム(自転車や自動車でアクセスが容易な観光)を起爆剤にと考えているようです。自分もとかく海外の世界遺産に目が行きがちですが、脚下照顧、この機会に国内の観光資源に注目していきたいと思います。まだ一度も足を向けたことのない都道府県がずいぶんあります。めざすは<ディスカバー・ジャパン・アゲイン!>です。