MGCとはそもそも何か?

MGCがマラソングランドチャンピオンシップのイニシャルだということを最近知りました。9月15日に開催されるMGCで、男女とも上位2選手が東京五輪のマラソン代表選手に選ばれるということです。耳に馴染まない命名はさておき、東京オリンピックを控え、長期低迷するマラソン(特に男子)を強化するために編み出されたマラソン代表選考の方法がMGCだということが分かってきました。

直近のリオデジャネイロ・オリンピックにおける男子マラソン選手3名の順位は16位(2:13:57)、36位(2:17:08)、94位(2:25:11)でした。1位のタイムが2:08:44でしたから、かなり水をあけられた恰好です。女子も残念ながら3大会連続で入賞を逃すという惨敗でした。ちなみに世界記録は2018年9月のベルリンマラソンケニアのエリウド・キプチョゲ選手(33歳)が打ち立てた2:01:39です。MGCで優勝候補の一角に挙げられる大迫傑(ナイキ)が2018年10月にシカゴで更新した日本記録は2:05:50、素晴らしい記録ですが歴代では世界で80位以下だそうです。

世界のマラソンは近年高速化の一途をたどっているのに、2002年に高岡寿成がマークした2:06:16の日本記録設楽悠太選手が2018年2月の東京マラソンで5秒更新するのになんと16年を要したことになります。16年ぶりの記録更新の蔭に、MGCという選考レースに進退をかけた日本陸連のタブーに挑んだ取組みがあったのです。

ラソン強化戦略プロジェクトのリーダーに就いたのは往年のマラソン界のヒーロー瀬古利彦さん。「一発屋は本番で勝てない」というジンクスに従い、長年、複数の選考レースの結果(実績)を基にマラソンの代表選考が行われてきました。ときに1位の選手が代表に選ばれないという不透明な選考に批判も少なからずありました。その上、オリンピックでは結果が出ない(男子は6大会メダルなし)というジレンマに日本陸連はもがき苦しみ、たどりついた結論がMGCだったというのです。気象条件などのコンディションに大きく左右されるマラソンは、複数のレースをタイムだけで単純比較することは出来ません。その意味でタブーとされた一発勝負は公平で誰の目にもすっきりします。

しかし、協会内部でもMGC1本化へは軋轢があったといいます。名選手必ずしも名伯楽ならずと、コーチとしての瀬古さんの実績不足を指摘する声もあったようです。瀬古氏とは因縁浅からぬ理論派の河野匡ディレクターが、2017年から2019年までの指定大会をMGCの予選と位置づけ、あらかじめ決められた順位や記録をクリアした選手がMGCに出場できるという骨組みを拵えました。オリンピックが迫ってドタバタと代表選びをするのではなく、中期的な視野で選手の育成・強化を図りつつ、本番でメダルを狙える選手が選ばれそうな気がします。

史上初の一発勝負MGCで大幅に日本記録が更新されるようなことがあれば、本番への期待も膨らみます。果たしてどんなレースになるのでしょうか?