ムーティ×シカゴ交響楽団で聴くブラームスの交響曲第一番&第二番

昨夜、サントリーホールで開催された冠公演に招待されて、リッカルド・ムーティ×シカゴ交響楽団という夢の共演を聴いて参りました。外気温は5度前後、久しぶりに開場を告げるパイプオルゴールを聞きました。ムーティシカゴ交響楽団音楽監督で、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団フィラデルフィア管弦楽団などの名門フィルを指揮した実績を持つ現役マエストロの頂点に君臨するひとりです。2018年のウィーンフィルニューイヤーコンサートで五度目の指揮台に上がったのは記憶に新しいところです。

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曲目はブラームス交響曲第一番(Op.68)と第二番(Op.73)。生涯で4つ作った交響曲のうち、第一番はベートーヴェンのシンフォニーの系譜を正統に承継することから、「第10交響曲」と呼ばれたりします。偉大な先達ベートーヴェンを意識したのか、交響曲第一番の着想から完成まで21年を要したといわれています。

重苦しい雰囲気で始まる序奏から、落ち着いた印象の第2楽章へ。短い間奏曲風の第3楽章を挟んで第4楽章に入ると、ストリングスのピチカートが軽快に奏でられ、トローンボンとファゴットがコラール風に歌い、歓喜の瞬間へと導いてくれます。

交響曲第二番はベートーヴェンの「田園」(第六番)に喩えられます。暗闇から光明へと劇的に展開する交響曲一番に比べて、二番は確かにのびやかなで明朗快活な印象を与えます。完成まで長い時間を掛けた一番とは対照的に、重圧から解放されたような躍動感溢れる曲目をムーティが実に楽し気に指揮してくれました。背筋をピンと伸ばして、左右正面へと豊かな身振り手振りで指示を出すエネルギッシュな指揮ぶりは、さすが偉大なマエストロ。とても77歳とは思えません。

舞台後方席で聴けたらなお良かったのですが、贅沢は言えませんね。サントリーホールはヴィンヤード型、カラヤンサントリーホールの設計に際して「コンサートは壁に向かって演奏するのではなくて、そこに集まった人たちと一体になって、一緒に、共に音楽をするのです」と初代館長の佐治敬三さんにアドバイスしたのだそうです。文字通り、客席とステージが一体となった素晴らしい演奏会でした。

アンコールはブラームスハンガリー舞曲第一番。アンコールピースの定番、アップテンポで力強い演奏にすっかり魅了されてしまいました。万雷の拍手の心地よい残響を耳元に感じながら、会場を後にしました。