東京駅丸の内駅舎(重文)は絵になります!

東京で好きなスポットはと問われれば、躊躇なく東京駅丸の内駅舎と明治神宮と答えます。どちらも東京を代表するランドマークですが、歴史的価値において、他の追随を許さないスポットだと断言できます。明治神宮に関しては、常緑広葉樹を植えて明治神宮の森を作り上げた本多静六先生の生誕150年にあたる2016年に当ブログで取り上げたので、今日は東京駅丸の内駅舎について少し掘り下げてみることにします。

先日、東京ステーションギャラリーを訪れた際、「東京駅のみどころ」(2017年12月版)と題する縦長のパンフレットを入手しました。東京ステーションシティ運営協議会という団体が発行しているこのパンフレットは、なかなか有益な情報を提供してくれます。後述する具体的な復原作業も一部このパンフレットのなかで言及されています。

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東京駅乗り入れている路線は、在来線9路線、新幹線4路線に地下鉄丸の内線を加えて14路線。ですから、東京駅は広大で東西ではまったく表情が異なります。東側の八重洲口は、帆を模したモダンな屋根が特徴的でグランルーフと呼ばれています。こちらは、かなり離れて見ないと斬新なデザイン性を体感することは出来ません。

東京駅の顔といえば、国の重要文化財に指定されている丸の内駅舎。平成24(2012)年に創建当時の姿に復原されて、惚れ惚れするような芸術的建造物に生まれ変わりました(かつて、丸の内駅舎のモデルはアムステルダム中央駅だとされてきましたが、建築様式が異なることを理由に近年は否定する見解が有力だそうです)。そして、平成29(2017)年には、ロータリーと長いあいだ視界を遮ってきた工事用の障壁が撤去され、駅前広場から丸の内駅舎の全容を見渡せるようになったのです。駅舎と駅前広場は、行幸通りから皇居へと連なる統一的景観を形成し、その美しさといったらまさに東京のシンボルです。周辺高層ビルとは対照的に、丸の内駅舎は低層で圧迫感がなくレトロな化粧レンガが目に和みます。両者は互いに反発するのではなく、東京の過去と現代を有機的に結びつけて見事な調和(ハーモニー)を実現しています。日没後、駅舎は21:00までライトアップ(照明デザイナーは面出薫さん)され、昼間とは全く違う表情を湛えます。ライトアップにも工夫が凝らされ、幻想的な光景を演出してくれます。

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東京駅を設計したのは名匠辰野金吾大正12年関東大震災に遭った際も丸の内駅舎は被害なし、その堅牢さこそ建造物の根幹です。ところが、終戦の年、空襲で3階部分が焼失し、その後、長期間に渡って手を加えられることはありませんでした。費用面の制約が大きかったからでしょう。掛かった復原費用は約500億円、空中権の売却で捻出されたのだそうです。東京の玄関口イコール日本の玄関口、着工から5年の歳月を要した大規模工事(免震工事を含む)に挑んだ関係者の着想と英断に心底敬服します。

褐色の化粧レンガに白い花崗(かこう)岩を帯状に配したデザインとビクトリア調のドームは「辰野式」と呼ばれ、創建当時の姿を再現するためには手間ひまのかかる職人仕事が欠かせませんでした。化粧レンガの再現、覆輪目地の保存・復原、天然スレート屋根の復原など、数えきれない細部にこだわった作業の集積が美しい丸の内駅舎を甦らせたのです。