ガレットリア+コクーン歌舞伎「切られの与三」

今月は4つの舞台を観る羽目になって嬉しい反面、慌ただしすぎて肝心の余韻に浸る暇がありません。日曜日の今日、コクーン歌舞伎の舞台を記録しておかないと、細部は忘却の彼方へということになりかねません。

5月16日は珍しく京王井の頭線神泉駅で下車、開演前に腹ごなしをしようとガレットリアに向かいました。今月のラジオのフランス講座がたまたまブルターニュ地方の郷土料理を題材にしていて、久しぶりにガレットを食べたくなったからです。掴みが長くなりますが、しばらく、本題コクーン歌舞伎のお話はご辛抱ください。


注文したのは定番2160円(税込)のコース+α。ガレットは+300円で<スモークサーモン、サワークリーム、トマトのガレット>とし、デザートクレープは<塩バターキャラメル>を選択しました。食べログを読むと、女性の投稿ばかりでドリンクにビールがあることがあまり触れられていません。ドリンクにはキリンラガーに次ぐロングセラー<ハートランドビール>を注文しました。ハートランドはラベルのないエメラルドグリーンのエンボスボトルで供されます。初夏を思わせる5月、ガレットとビールは絶妙の取り合わせです。2時間制限だったこの日、Bunkamuraまで徒歩1分のガレットリアで食事を愉しみながらゆったりと気持ちをオンからオフへと切り替えました。ガレットリア+コクーン歌舞伎は、自分のなかでは最高のイート&パフォーマンスなのです。

シアターコクーンはお気に入りの劇場です。座席数はわずか747席、可動式でお芝居によって設えが変化します。25年目を迎えたコクーン歌舞伎は「切られの与三」、世話物の名作「与話情浮名横櫛」を脚色した新作でした。与三郎は初役となる七之助、お富を中村梅枝コクーン歌舞伎初)が務め、脇役を笹野高史らが固めました。

初めて観るこの演目、十分に堪能させてもらいました。新鮮味に乏しいという辛口評もあるようですが、優男与三郎を七之助が舞台と客席を縦横無尽に駆け抜けて熱演、女方の大役のみならず与三郎のような立役にも稀有の才能を感じました。ブレヒト流の群像劇とシンプルなセットの組み合わせも新鮮でした。七之助とお富の孤独な心象風景をジャズピアノのリフレインで際立たせ、ベースやパーカッションが台詞とシンクロして、洋楽と歌舞伎の組み合わせに新しい可能性を見出せたそれはそれは素敵な舞台でした。