高麗屋三代同時襲名という奇蹟


今週は待ちに待った歌舞伎座ウィーク!開場130年を迎えた歌舞伎座の幕開けを高麗屋三代同時襲名が飾るとはこんなめでたいことがあるでしょうか。親・子・孫の三代同時襲名は、歌舞伎界で実に37年ぶり、しかも高麗屋にとっては2代続けとなる慶事なのです。男児が生まれその父親と祖父が共に現役でいられて初めて実現する三代同時襲名、奇蹟としかいいようがありません。

メディアの取材に応じて、二代目白鸚を襲名した九代目松本幸四郎さんが<名跡を継ぐことは命を継ぐことだ>とおっしゃっていたのが印象的でした。初代松本白鸚さんから授かった言葉だそうです。この高麗屋三代同時襲名で十代目幸四郎を名乗ることになった主役の父親よりも脚光を浴びているのが、八代目染五郎を襲名した長男いっくん(本名藤間齊)、まだ中学1年生です。二歳で飛び六方の真似をして見せたという早熟ないっくんが襲名披露で演じるのは「勧進帳」の義経。2014年にお父さんが初めて弁慶を演じたときの義経役は吉右衛門さんでした。代々、吉右衛門さんのような経験を重ねたベテラン役者が演じてきた義経役に12歳が挑むというのは、無論、史上最年少。

弁慶は憧れの役だそうで、弁慶を歴代最多1600回以上演じたを曾曾祖父七代目幸四郎を超えたいというから頼もしいではありませんか。婦人画報に「しばい絵日記」を連載するほど画才に恵まれたいっくんが最も描いたのも弁慶。襲名披露で弁慶を演じる父は「弁慶を極めたい」と語り、息子は高麗屋代々の当たり役の上演回数を更新したいという、彼がこうした夢を育んできたのは宿命なのかも知れません。