不動産業界の陋習〜横行する両手仲介〜

最近、東急リバブルがユーモラスなCMをシリーズで放映しています。ぐっさん扮するお父さんが披露するトリビア的蘊蓄にびっくりする子供たちが、東急リバブルの話題に及ぶと妙に詳しいという内容のCMです。ほのぼのとした印象を与えるので、東急リバブルのコーポレートイメージの向上に一役買っていることは疑いないでしょう。


同業の三井のリハウスも、樹木希林さんを起用して相続された「おばあちゃんの家」を題材に、これまた好感度の高いCMを流しています。マンションにせよ戸建てにせよ、不動産は庶民にとって生涯で最大の買い物。ところが、こうした大手不動産仲介業者の巧みなCMに惑わされて仲介を依頼すると、思わぬ落とし穴にはまる危険性があるので要注意です。

「両手取引」と呼ばれる手法をご存知でしょうか。長年住み慣れたマンションを売って、住み替えようとするとき、仲介業者に自宅マンションの売却を依頼したとしましょう。成約すれば、先のT社やM社は、売り手であるあなたから「売買価格の3%+6万円」の仲介手数料を受け取り、買い手からも同額の手数料を受け取ります。売買価格が8000万円と仮定すると、売り方と買い方をつなぐだけで8000万円X3%+6万円の2倍にあたる492万円の手数料を受け取ることができます。


一概に3%の手数料自体が高いと言っているわけではありません。物件によっては買い手がつきにくいケースもありますからね。しかし、売り手は自宅を1円でも高く売りたいと願う一方、買い手は少しでも安く手に入れたい・・・仲介業者は物件情報を独占して買い手も自ら見つけて、濡れ手で粟を狙います。仲介業者は買い手担当と売り手担当を社内で分けて公平を図っているように装いながら、成約を急ぎます。冷静に考えれば割を食うのは売り手です。売り手には買い手不在(或いは買い手の希望価格が市場価格だと強弁して)を理由に売買予定価格の引き下げを迫り、買い手にはこれが精一杯だから急ぎましょうと迫る。究極の利益相反です。

両手で手数料が得られるのであれば、売り手の希望売却価格を5%下げても、早く話をまとめて次の物件を手掛けた方が得策です。2009年に民主党が政策集に「両手取引の原則禁止」を掲げましたが、既得権益を失いたくない不動産業界の猛反発に遇い、政権政党になつても実現に漕ぎつけることはできませんでした。マイナス金利で収益は先細る一方の地銀あたりも仲介業解禁を熱望していると聞きます。

数日前、利用経験のある三井リハウスからDMが届きました。2度目のリハウスで仲介手数料10%オフ(or 売却で10万円・購入で5万円)と謳ってあります。一見、お得意様向けのディスカウントに映りますが、仲介業者の得べかりし利益に比すれば些細な値引きに過ぎません。こうした場合、売り手はどう出るべきでしょうか。3%の手数料はあくまで上限、8割以上の不動産仲介業者が請求するこの料率の引き下げを交渉してみましょう。物件が好立地で売りやすいのであれば尚更です。3%を2%〜1.5%にすることも可能ではないでしょうか。