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「家を売るオンナ」が断然面白い!

TVドラマの改編時期に各局が番宣を行いますが、続けて見たいと思わせるドラマはシーズンにせいぜい1本あるかないかです。そんな熾烈な視聴率獲得競争のなか繰り返し刑事や医者が登場するドラマが製作されるのは、日常生活から乖離した世界が視聴者の関心を引きつけてくれるからでしょうか。弁護士モノが目立つのもその延長線にあるように思います。

その点、大石静さんのオリジナル脚本に依る「家を売るオンナ」は、不動産業界を舞台にした異色の作品。毎回注目して観ています。以前、宅地建物取引士の資格取得のために集中して勉強した時期がありましたし、本業のインベストメントバンキングと不動産取引は切っても切れない関係だけに、本作のようなドラマには自然と関心が向かってしまいます。不動産取引に関わる人間模様をドラマ仕立てにするとはいい着眼だと思います。視聴率も12%あたりで推移していますので、高評価を得ていると言っていいでしょう。


家を買ったり売ったりすることは人生の一大事、それなのに、学生のときはおろか社会人になってからも肝心なことを教わることはありません。本作の主人公、三軒家万智チーフ(北川景子)は、同僚の若手が苦戦を強いられるなか、ひとりだけ次々と狙った潜在顧客にマンションや戸建て住宅を売りつけていきます。北川景子らしからぬ無表情な役作りが却って奏功しています。売買が成立し心のなかで「落ちた」と呟くシーンがとても印象的です。一見悪辣なセールスに見えますが、仕事ぶりは誠実そのもの、いざ契約となると大金をはたく買い物に尻込みするOLの背中をさりげなく押してあげる優しも持ち合わせています。ドラマに登場するセールスは店長も含めておしなべて善良ですから実生活ではもう少し注意が必要ですが、不動産の表裏を見る上でこのドラマは結構役に立ちます。不便この上ない駅徒歩20分の立地を自然豊かな住環境と言いくるめるマジックにはご用心ということです。

新築のマンションを大手デベから買ったりすると、「売主の直売」にあたり不動産仲介手数料がかかることはありません。本作では、町の不動産屋が売主と買主の橋渡しをする所謂不動産仲介の現場が舞台です。ドラマに登場する棒グラフは、各営業マンが獲得した仲介手数料(売買価格X3%+6万円)の合計を示すもので成績表に他なりません。仮に2百万の手数料が得られたとすると売買価格は66.7百万円だったことになります。首都圏でも中古物件でこの価格となると高額取引の部類になるのではないでしょうか。地方でこの番組をご覧になっている方には、手数料が恰も売買価格のように聞こえるのかも知れません。東京と地方の不動産価格の格差は歴然ですからね。ひとりの営業マンが売主を見つけ買主も探し出すというシーンがありましたが、これはご法度、双方代理は禁止ですから。

坂の上の物件や事故物件など一般に販売しづらい物件を三軒家チーフが実に手際よく売ってみせます。需要のなさそうな物件をどう売るか、そこがドラマの最大の見どころです。蓼食う虫も好き好きとはこのことですね。不動産の魅力はひとつとして同じ物件がないことです。不動産屋さんは無関係な売主と買主を結びつけるキューピット役、なかなか夢のあるお仕事ではありませんか。